【朗読あり】芥川賞作家・小野正嗣が伝える文学への熱い思い――村田沙耶香『コンビニ人間』を読み解くには
小野正嗣さんの新刊『歓待する文学』が2021年11月25日に刊行されました。
芥川賞作家であり、フランス語・英語の翻訳を手掛け、早稲田大学教授にしてNHK「日曜美術館」でキャスターを務める小野さんは、常に新しい文学作品を探し求め、評論する名うての読み手でもあります。その多岐にわたる活動を支えているのは、文学や創作への深い愛情と言葉への揺るぎない信頼にほかなりません。
本書では、世界の文学16作品を紹介しながら、小野さんの文学に対する熱い思いを余すところなく語っています。
『歓待する文学』刊行に際し、小野さん本人が本書のなかから1章分を朗読しました。取り上げたのは、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』について論じた章。4回にわたってお届けした朗読を当記事では紹介します。
文学を愛するみなさん、小野さんが『コンビニ人間』をどう読み解くのか、文学について何を語るのか、時折アドリブも交じる朗読で、どうぞお楽しみください。
朗読第1回
『コンビニ人間』が日本のみならず、世界でベストセラーになったのはなぜ?
朗読第2回
「普通」で「まとも」な人間になるために、他人の行動を模倣する主人公・恵子の冷静で精緻な観察力に注目。
朗読第3回
登場人物の名前が、コンビニ関係者は漢字表記で、コンビニの外の世界の住人はカタカナ表記なのはなぜ?
朗読第4回
自分を「世界の部品」だと語る主人公の恵子。人間は、取り換え可能・使い捨て可能な存在なのか?
本書目次
1 文学は歓待する
2 追憶の悲しみ ~W・G・ゼーバルト『移民たち』
3 外国語で祈ることはできるのか ~イーユン・リー「千年の祈り」
4 言葉はケアする ~アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』
5 言葉の外に耳を澄ます ~小川洋子『ことり』
6 絶対的な孤独としての一本の木 ~ハン・ガン『菜食主義者』
7“こんなふうにしても人は生きていける” ~J・M・クッツェー『マイケル・K』
8 信頼できる作家による信頼できない語り手 ~カズオ・イシグロ『浮世の画家』
9 文学は獣も人も自由にする ~多和田葉子『雪の練習生』
10 翻訳は母語の可動域を広げる ~村上春樹『職業としての小説家』
11 鳥たちはどこで翼を休めるのか ~マリー・ンディアイ『三人の逞しい女』
12 故郷と異郷のあいだに架かる橋 ~マリリン・ロビンソン『ハウスキーピング』
13 悲しみと喜びをむすぶ
14 愛情と配慮の流れが淀むとき ~レイラ・スリマニ『ヌヌ 完璧なベビーシッター』
15「わたし」は「わたし」のものなのか? ~村田沙耶香『コンビニ人間』
16 心の余白、風景の余白 ~瀬尾夏美『あわいゆくころ』
プロフィール
小野正嗣(おの・まさつぐ)
1970年、大分県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。パリ第8大学文学博士。早稲田大学文化構想学部教授。『九年前の祈り』(2014)で芥川賞。『踏み跡にたたずんで』『にぎやかな湾に背負われた船』ほか著書多数。主な訳書に、マリー・ンディアイ『ロジー・カルプ』『三人の逞しい女』、アミン・マアルーフ『アイデンティティが人を殺す』など。2018年からNHK「日曜美術館」のキャスターを務めている。