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愛くるしいねこたちがいっぱい!――荒井良二さんが自在に描くねこと夢
世界からも高く評価されるアーティストであり、日本を代表する人気絵本作家である荒井良二さん。これまで『ねむりひめ』や『きょうのぼくはどこまでだってはしれるよ』など、これまでさまざまな絵本を編集部ではご一緒させていただいてきました。
そんな荒井良二さんの最新絵本『ねこのゆめ』が6月26日に発売されました。最新絵本の主役はねこ! ねこ好きの荒井良二さんにとって、本作が単著として初めての“ねこの絵本”です。ねこ好きの人はもちろん、そうでない人も読んだらほっと温かく、何より前向きな気持ちになれる本書についてご紹介します。
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「そのむこうにはなにがある?」
絵本『ねこのゆめ』では、たくさんのねこたちが登場します。家から一度も出たことがないねこ、公園で過ごしているねこ、海の近くでたたずむねこ……など、個性豊かな愛らしいねこたち。ときにキュートで、ときにたくましく描かれるねこたちは、それぞれ思いを抱いています。「行ってみたい場所」「見てみたいもの」「会ってみたい誰か」「なってみたい未来の自分」など、ささやかな憧れから大きな野望まで、ねこたちは自由に想像します。
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この絵本では、大小さまざまな希望や願いなど、「夢見ること」を通して、未来やイメージを自在に想像して、それを膨らませることの楽しさ、面白さについて何度も何度も描かれています。想像してはワクワクして、思いを馳せてはキュンとして。そこには前向きさに満ちあふれ、読めば読むほど、ねこたちと同じように心が躍っていきます!
「〇〇のむこうにはなにがある?」
リズミカルにしばしば投げかけられるその言葉。その言葉とともにページをめくった先にどんな景色がひろがるのか。めくる手をいったん止めて想像してみることで、絵本の楽しみ方がまた増えます。でもそこは荒井良二さん、さらに大きくその想像を超えてくれるはずです。
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ねこが足を「ふみふみ」と動かす仕草は、ねこ好きの人にとってはおなじみですが、この絵本でもその「ふみふみ」が随所に出てきます。かわいらしくも、どこか切ないような、じんわい温かいような「ふみふみ」。荒井良二さんが「ふみふみ」に込めた思いは何なのか、その音の心地よさを感じながら味わっていただけたらうれしいです。
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熱い感想が続々!
刊行に先駆けて、WEBサイト「NetGalley」にゲラを公開したところ、数多くの感想が寄せられています。以下はその一例(一部抜粋)です。
1ページ1ページが、まるで1つの作品のようで、ながめているだけで、とても豊かな気分になれる。紡がれることばが、歌の詞のようで、声に出して読んでなくても、耳に心地よいのがわかる。まるで詩をながめているみたい。 《図書館関係者》
猫の目を通しての景色が、荒井さんの温かくて優しい色使いで伝わってきます。猫から見た景色は、とても楽しそうで読者側も童心に帰れるようです。猫好きならわかる『ふみふみ』が、とても柔らかく愛しく感じます。猫の気持ちを味わえる一冊です。 《レビュアー》
素晴らしい荒井良二さんの色彩豊かな夢。猫もみんなもこんな楽しい、ひっそりと幸せをかみしめるような夢を見られたら、なんと素敵な事でしょう。願わくば甘えたい誰かの側で。誰かに「夢見ること」を手渡したい時にも良さそう。 《書店関係者》
とにかく荒井良二さんの絵がすばらしい。美しく、こちらの心にしっとりと染み込んでくる。ねこたちの「ふみふみ」の科学的な意味は理解していますが、ここで描かれるように、夢や憧れがもたらす行為として読めば、なんとファンタスティックなことでしょうか。夢見ること、憧れの世界に遊ぶこと、自由で希望ある世界への希求を手放さないねこたち。暮らしの中でともすればリアルな些事に心を埋没させがちな大人たちこそ、この本を開いてひととき「ふみふみ」してみませんか? 《レビュアー》
荒井良二さんが自由に想像したねこたちの日常や生きざまから、とてもピュアな「夢」の存在に触れられるはず。色彩豊かな絵と、素直であたたかい言葉が、自由に想像することの面白さを教えてくれる、ねこ好きを問わず、子どもはもちろん大人の心にも響く、やさしさに満ちた物語です。
気になった方は、ぜひお手に取ってみていただけたら幸いです!
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あらすじ
ねこはいつもゆめ見てる。会いたい誰かが待つ世界を――。
大きな家に住んでいるねこのユメ。ユメはいつもゆめみてる。まだ出たことのない街の景色や出会う仲間たちを想像して。街ねこたちもそれぞれゆめみてる。行ったことのない道の先、海や空の向こうの世界をゆめみてる。あたたかいなにかの、あたたかいだれかの。そのむこうにはなにがある?
大規模展覧会も開催
久しぶりに荒井良二さんの大規模な展覧会「new born いつも しらないところへ たびするきぶんだった」が、今年7月より複数の美術館で順次開催されます。お近くにお越しの際など、こちらもぜひお足運びくださいますと幸いです。
展覧会内容(公式HPより)
「new born いつも しらないところへ たびするきぶんだった」と題した本展では、旅をするような気分で日々あらたに作品を生み出してきた荒井さんの創作活動を、新作や過去作約300点を織り交ぜて紹介します。
展覧会で出会うのは、大きな絵画や絵本原画、イラストレーション、そして新作となる立体作品や小さなガラクタたち。これらは、絵を描くのが好きという、荒井さんの創作の根底にある気持ちを物語っています。
荒井さんは、これまでどんなところを旅して、次はどこへ出かけていくのか。ここからまた 新しい荒井良二さんが誕生=new born する展覧会を、一緒に体感しましょう。
開催予定
【神奈川会場 】 横須賀美術館 2023 年 7 月 1 日~ 9 月 3 日
【千葉会場 】 千葉市美術館 2023 年 10 月 4 日~ 12 月 17 日
【愛知会場 】 刈谷市美術館 2024 年 4 月 20 日~ 6 月 16 日
【福島会場 】 いわき市立美術館 2024 年 9 月7日~ 10 月20日(予定)
※展覧会の詳細はこちらの公式HPよりご確認ください。
プロフィール
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荒井良二(あらい・りょうじ)
絵本作家。1956年山形県生まれ。日本大学藝術学部美術学科卒。1999年に『なぞなぞのたび』でボローニャ国際児童文学図書展特別賞を受賞、2005 年には日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど、国内外で数々の絵本賞を受賞。さまざまなアート活動やワークショップを通じて多くの人を魅了する、日本を代表する絵本作家の一人。『きょうのぼくはどこまでだってはしれるよ』『チロルくんのりんごの木』『ねむりひめ』『ぼくらのエコー』(NHK出版)ほか著書多数。
関連書籍