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この世から旅立った猫と飼い主の再会を描いた感動作に、涙する人続出!

2月22日の猫の日を前に、NHK出版からミヤザーナツさんの『ただいまねこ』が発売になりました。発売前にNet Galleyで内容を公開したところ、「泣けた!」「心が温かくなった!」といったレビューが殺到。アマゾンの「童話・子どもの文学」で名作、ベストセラーをおさえて堂々の1位を獲得しました! きょうは絵本の発売を記念し、作者のミヤザーさんにお話をうかがいます。


Q:「ただいまねこ」が発売になりました。いまのお気持ちをお聞かせください。
ストレートにうれしいです。描いたあと、しばらくは客観視ができず、色校正を見るたびに全部描き直したくなりましたが、ようやく自分の手から離れた、独立した「作品」として認識できるようになってきました。ホッとしています。

Q:この作品はどのようにして生まれたのでしょう。
チビ太と名付けた猫を、8年前に亡くした経験がベースになっています。治せない病気であっという間でした。同じ病気をもつ猫ちゃんの飼い主さんの参考になったらとブログを書きましたが、お寄せいただくコメントも見られないくらいまいってしまい、数年は猫を描くことにも抵抗がありました。が、2020年のお盆の時期に、インスタグラム用にふと思い立って一枚の絵を描きました。長年飼っていた猫を失った友人と「こんなふうに帰ってきてほしいね」とやりとりしたのを覚えています。仕事部屋の壁に貼ったその絵を眺めては、いつか気持ちが落ち着いたときに、自分だけのためにこっそり本にしようと思っていました。それから月日がたち、個展で出会った猫好きの編集者さんと「いつか猫の絵本をつくれるといいですね」という話になり、いくつか準備していたお話を少しずつ進めていました。半年後、その編集者さんからご連絡がありまして……、せっかくの機会なので一番いいものをと、候補作を自らオーデション。じつは、「ただいまねこ」とは別のお話でダミーを創ってお送りしました。が、そのとき気になったのはチビ太の話です。「この物語を誰かに読んでほしいと思ってない?」と考えている自分に気づいたのです。チビ太の話は「創った」というよりも、ごく自然に「出てきた」お話です。

Q:タイトルが「おかえりねこ」ではなく「ただいまねこ」なのはどうしてでしょう?
飼い主であるあかりちゃん側ではなく、この世に帰ってくる側の、ちびたの立場から創ったお話だからです。「『ただいま』と大好きな人に告げる猫のお話」だと考えてくださるとよいと思います。「おかえり」という言葉は、それぞれ読者の皆さんが、ちびたに言ってくださるでしょう。

Q:気に入っていらっしゃるシーン、苦労されたシーンは?
気に入っているのは、みんなでもりもりご飯を食べていたり、うれしそうに列に並んでいたり、楽しいシーン全部です。苦労したのは、あかりちゃんの顔、特に目です。ラフまでデジタルで進め、本番は手描きだったのですが、最終的には編集者さんとやりとりしながら納得がいくまで7回修正しました。

Q:画材はどういったものを使われているのでしょう?
原画入稿の場合、アクリルやアクリルガッシュなどの画材をよく使用しますが、今回はそれ以外に色鉛筆や透明水彩、オイルパステルなども使いました。色の表現として、もっとスッキリとした透明感を出したいと思っていて、ここ1年ほど試行錯誤を繰り返したところ、ようやく納得できる方法を見つけました。紙は版画用紙のアルデバラン、真っ白で気にっています。わたしは紙版画も制作しますが、どちらにも使えて最高です。

Q:あかりちゃんの耳元で「ただいま」というささやくシーンがとても印象的ですが、どのような思いで描かれたのでしょう?
編集者さんに見ていただく前のラフでは、もう少し感情的な表現を用いて描いたのですが、どうにも辛くなってしまって提出しませんでした。わたしは、自分の感情が動くことを人に伝えるのが昔からとても苦手で、今回もそういう側面が出たのだと思います。あえてそのシーンは描かずにダミー本を作りました。そして、企画が進むことになり、何人かの方に見てもらったのですが、猫本専門店の「キャッツミャウブックス」の安村さんに「ふたりが再会するシーンが見たい」と言われ、わああ、と。それで逃げるのをやめ、何パターンか描いたのちに、こちらに決めました。

Q:読者へのメッセージをお願いします。
以前、カフェで猫関連のイベントに参加したときに、亡くした猫を思い出されたらしく、ずっと涙目の方がいらっしゃいました。わたしはその方からあえて猫ちゃんの楽しい話をたくさんうかがってみました。すると、その方はだんだん元気になり、吹っ切れたような表情でイベントをあとにされました。うまく言えないのですが、この絵本を手にとった方の気持ちが穏やかになったり、元気になったりしたら、うれしく思います。

Q:猫の本専門店「キャッツミャウブックス」さんでイベントを開催されると聞きました。
はい、3月1日(水)から12日(日)まで、世田谷区三軒茶屋のキャッツミャウブックスさんで、「ミヤザーナツ『ただいまねこ』でました記念展」を行います! 営業時間は14:00~19:30ごろまで、火曜が定休日です。記念展開催中の4日(土)はウクレレシンガーソングライターの九里みほさんの朗読と弾き語りを、11日(土)は「絵本ができるまで」と題してNHK出版の児童書編集長さんとトークをします。完全予約制で、席数が少ないので、ご興味がおありの方は、早めにお問い合わせください。

ミヤザーナツ
絵本作家、イラストレーター。長野県生まれ。デザイン会社を経て、イラストレーターとして出版業界や広告業界で活躍。2020年より作家名を「宮澤ナツ」から「ミヤザーナツ」に変更。絵本に『らったくんのばんごはん』(作・坂根美佳/福音館書店)、『がんばれ、なみちゃん!』(作・くすのきしげのり/講談社)、『でんしゃにのるよ ひとりでのるよ』(作・村せひでのぶ/交通新聞社)。紙芝居に文部科学省選定『キジムナーにあったサンラー』(さえぐさひろこ 脚本/童心社) 、『アマガエルのきしょうよほうし』(キム・ファン 脚本/童心社)などがある。音楽を聴くこと、庭仕事、散歩、読書、生き物と接することが好き。

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