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「結婚しなくてよい」が7割近くに――平成最後の調査で明らかになった、現代日本人の姿とは?

*「結婚しなくてよい」が7割近くに
*夫の家事「するのが当然」でも「中心は妻」
*天皇に「尊敬の念をもっている」過去最多に
 1973年から5年ごとに実施している「日本人の意識」調査。「生活の目標」や「人間関係」といった基本的な価値観から、「家庭」や「仕事」、「政治活動」や「ナショナリズム」など、様々な領域の質問要項を設定し、それを45年にわたってほぼ同じ方法で継続的に調査・蓄積してきたデータの分析は、社会学の研究者たちからも高い信頼を得ている。日本人の意識はどう変わったのか? 何が変わっていないのか? 時代状況や世代交代による意識の変化を明らかにしながら、日本人の「いま」と「これから」を読み解いていく。
 当記事は、2020年2月25日に発売のNHK BOOKS『現代日本人の意識構造[第九版]』の一部からお届けするものです。

男女と家庭のあり方

 男女関係や家庭に関する考えは「日本人の意識」調査の中で最も大きく変化している。結婚から老後まで、ライフステージごとに人々の意見がどのように変化してきたのかをみていきたい。

1 結婚観——「結婚しなくてよい」が七割近くに

多くの年層で増加

 まず、結婚に関する意識からみていきたい。この質問は第5回の1993年の調査から開始し、「結婚すること」について、次の二つの選択肢から、みずからの考えに近いものを選んでもらっている(第49問)。

1.人は結婚するのが当たり前だ  《するのが当然》
2.必ずしも結婚する必要はない  《しなくてよい》

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図Ⅱ-1 結婚すること〈全体〉

 この質問を始めた93年には、結婚を《するのが当然》という人が45%だったのに対し、《しなくてよい》という人は51%と、この時点ですでに多数派になっている(図Ⅱ-1)。その後、2003年と08年は変化がなかったものの、長期的には《しなくてよい》が増加傾向にある。最近の5年間でも13年の63%から68%に増加しており、結婚を《しなくてよい》と考える人は7割近くになっている。

 図Ⅱ-2は「結婚すべきかどうか」についての考えが年齢によってどう違うのかを、男性と女性に分けて集計した結果である。93年と18年のデータを比較してみる。

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図Ⅱ-2 結婚すること〈男女年層別〉

 男性の結果をみると、《しなくてよい》は、若い人で多く、年齢が高くなるほど少ない。93年は、40代後半で《するのが当然》という人と《しなくてよい》という人の割合がほぼ同じになり、それより上の年層では《するのが当然》という人が多く、若い年層では《しなくてよい》が多くなっていた。それが18年になると、《するのが当然》と《しなくてよい》がほぼ同じ割合になるのは70代前半になる。25年の間に、ほとんどの年層で《しなくてよい》という人が大きく増え、《するのが当然》という人が大きく減少したのである。

 女性では、93年は、50代前半で《するのが当然》と《しなくてよい》の割合がほぼ同じになり、それより上の年層では《するのが当然》という人が多く、若い年層では《しなくてよい》が多くなっていた。

 18年になると両者が並ぶのが75歳以上となり、その他のすべての年層で《しなくてよい》という人が多くなっている。女性でも、25年の間にほとんどの年層で《しなくてよい》という人が大きく増え、《するのが当然》という人が大きく減少した。また、ほとんどの年層で《しなくてよい》という人が男性よりも多く、《するのが当然》という人が男性よりも少なくなっている。

世代によって決まる考え

 このように、結婚は《するのが当然》という人が多いのは男女とも高年層だけで、他の年層では《しなくてよい》という人が多いのが今の日本の姿である。そこで、ここからは、こうした状態を生み出した要因についてみていきたい。

 図Ⅱ-2では《しなくてよい》の年層別の結果を示したが、これを生まれた年を基準に描き直すと図Ⅱ-3のようになる。図の左のほうは「1999~2002年生まれ」や「94~98年生まれ」など最近調査対象に加わった新しい世代で、右へ行くにしたがって古い世代になる。また、グラフのそれぞれの線は調査各回の結果を示している。ここからは次のようなことを読み取ることができる。

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図-3 結婚すること《しなくてよい》〈男女生年別〉

 ①《しなくてよい》という人は高年世代ほど少なく、新しく調査対象になった世代ほど多い。男性と女性では、女性のほうが《しなくてよい》の割合が高いが、男女とも若い世代で多く、「74~78年」以降に生まれた世代になると男性は70%、女性は80%を上回ることが多い。

 ②各回の線はほぼ重なっている。つまり、生まれ育った時期、すなわち世代ごとにみると、時代(調査時期)が変わっても《しなくてよい》の割合にあまり変化がない。例えば、男性の「39~43年」生まれでは、93年以降、33→31→29→41→37→30(%)、「69~73年」生まれでは58→69→73→68→67→68(%)と推移している。いずれも、ある程度の幅では変化しているものの、世代間の違いに比べれば差は小さい。

 5年ごとにみた場合には変化した層もあるが、93年からの25年間でみると、《しなくてよい》という人は、男性では「74~78年」生まれで増えただけで、女性では「69~73年」と「74~78年」生まれで増えただけである。

 このように、生まれ年(=世代)を基準にして比較すると、年層別に比較した場合と比べて変化が小さい。世代別に比較して変化していないということは、人は結婚について、人生のある時期にもった考えを一生の間もち続けると解釈できる。社会状況が変化しても、世代でみると人びとの考えは変わらず、その割合はほぼ決まっている。その結果、時代が推移して、結婚を《しなくてよい》という人が少ない明治や大正生まれの世代が舞台から去り、《しなくてよい》という人が多い若い世代が新たに加わるという世代交代が起こり、図Ⅱ-1でみたように国民全体では《しなくてよい》という人が増えたのである。

 一方、グラフは省略したが、結婚は《するのが当然》という人は、若い世代では少なく、明治や大正生まれの人では多い。《するのが当然》という人も、世代ごとにみた場合はあまり変化していない。つまり、《するのが当然》という世代は時代の推移とともに去り、こうした考えを支持する人が少ない若い世代が増えたため、国民全体では減ってきたのである。

「結婚を望まない」人は増えていない

 結婚をしない人は実際にも増加しており、50歳までに一度も結婚したことがない人の割合を示す「生涯未婚率」は、1990年には男性が5.6%、女性が4.3%だったが、2015年には男性が23.4%、女性が14.1%となり大きく上昇している。そして、未婚化、晩婚化の流れが今後も変わらなければ、2040年には男性では29.5%、女性では18.7%まで上昇すると推計されている。しかし、自分自身が結婚したくないと考える人は決して多くはない。NHK放送文化研究所が2013年に行った調査では、16歳以上の未婚者(547人)のうち「結婚したくない」という人は9%にすぎない(表Ⅱ-1)。《しなくてよい》と考える人(397人)だけに限ってみた場合でも、「結婚したくない」は10%で、未婚者全体での割合と変わらない。結婚しなくてもよいと考える人が増える一方で、自分については、ほとんどの人が結婚してもよいという気持ちをもっているようである。

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表Ⅱ-1 将来の結婚の希望 〈未婚者全体、「結婚しなくてよい」という人〉

 国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」(2015年調査)によると、18~34歳の未婚者で「一生結婚するつもりはない」という人は微増傾向にあるものの、「いずれ結婚するつもり」という人は男性で86%、女性で89%と依然として高い水準にある。この調査では、独身生活の利点や結婚の障害になることについても尋ねているが、独身生活の利点としては「行動や生き方が自由」、結婚の障害としては「結婚資金」を挙げる人が最も多い。こうしたことも、必ずしも結婚しなくてよいという意識につながっているのかもしれない。


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