100年の物語、そのバトンを繋ぐ――連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」初代ヒロイン橘安子役・上白石萌音インタビュー
11月1日から放送がスタートするNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」は、“朝ドラ”史上初の3世代ヒロインが織り成す、100年のファミリーストーリー。
当記事では、10月25日発売の『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 カムカムエヴリバディ Part1』より、初代ヒロイン・橘安子を演じる上白石萌音さんの撮り下ろし巻頭インタビューをお届けします。
朝ドラのヒロインには、やっぱり憧れがありました。お芝居をしている人ならみんな、一度は憧れる場所だと思います。先輩方から「萌音ちゃん、朝ドラっぽいね」と言っていただくことも多かったので、おこがましいなとは思いつつ、ひそかな夢として抱いていました。
「カムカムエヴリバディ」への出演が発表されたとき、たくさんの方からお祝いメールをいただきました。誕生日より多かったかもしれません(笑)。特に祖父母は朝ドラが大好きなので、「新しい生きがいができた」と言ってくれてとてもうれしかったです。私自身も感慨深かったですし、「よし、頑張らなきゃ!」と気合いも入りました。
私が演じる安子は、和菓子店「たちばな」を営む橘家に生まれ、愛情たっぷりに育てられた幸せな女の子。何か特別な夢を追いかけるわけでもない、本当に普通の女の子です。それでも彼女の生き方に共感できるのは、生きることそのものがドラマだからだと感じています。
読み返すたびすてきな台本。
シーンを撮るごとに、心が震えます
3人のヒロインで繋ぐ100年の物語ですので、私はその3分の1を担っています。通常の朝ドラなら、半年かけてひとりの人物を描きますが、それを、短期間にぎゅっと詰め込んでいるので、すごく濃いんです。普通の女の子の人生とはいえ、3倍濃縮で激動。毎シーンの撮影で、心が震えます。
脚本の藤本有紀先生のセリフは、ひとことひとことが温かくて、本当にすてき。最初から最後まで繰り返し読んでいますが、何回読んでも「はあ~すてきだ!」と心から思います。役への愛を深められる台本をいただけて幸せです。
その感動をちゃんとお芝居で表現しようと撮影へ行くと、出演する皆さんが台本をさらに深めたお芝居をされている。セリフがいきいきと輝く瞬間を、日々目の当たりにしています。「すばらしい脚本を最高の形で届けよう」という皆さんの熱意に、私も熱くなりながら演じています。
舞台である岡山にもロケで行きました。台本で読んで知っていた場所では、たとえ初めて訪れた場所でも「ただいまー!」という気持ちになるんですよ。「晴れの国」と言われるだけあって、気持ちのいいお天気が続きましたし、雨のシーンではパッと曇ってくれた! 岡山、すごい!
おはぎ・英語・ラジオ……、
物語の軸にご縁を感じて
安子が大好きなおはぎは、私も大好き。安子が大人になるほど、和菓子屋の娘であることが大きな意味を持つので、おはぎは物語の大事な軸ですね。「和菓子を恐い顔して食べる人はいない」というセリフがありますが、本当にそのとおりだと思います。小豆を炊くシーンではセットに甘い香りが漂って、疲れた体に効くので、現場もおはぎに救われているのかもしれません(笑)。
英語とラジオも安子と深く関わってきます。私は小学生の頃に3年間メキシコで暮らして、文化は違っても共通言語があれば分かり合えると実感し、英語を勉強し始めました。今は「NHKラジオ英会話」のテキストで翻訳の連載もさせていただいているので、「カムカムエヴリバディ」の世界にはとてもご縁を感じます。戦前からラジオで英語が学べたことにも驚きました。人が学びたいという気持ちは、いつの時代も変わらないんですね。
この作品は「カムカムエヴリバディ」というタイトルのように、「みんなおいで!」と迎え入れてくれる、温かく優しいドラマです。親子や家族の繋がりを愛(いと)おしく感じていただけるんじゃないかなと思います。この先、深津絵里さん、川栄李奈さんにバトンを繋ぐことを考えると背筋が伸びる思いですが、藤本先生の脚本の力と、監督、共演者の皆さんを信じて、ワンシーンずつ積み重ねていきたいです。ひとつひとつ丁寧に、ベストを尽くして頑張ります!
取材・文=安田 光 撮影=宇井幸嗣(G.Fプロ) スタイリング=嶋岡 隆、北村 梓(Office Shimarl) ヘア&メイク=冨永朋子(アルール)
プロフィール
上白石 萌音(かみしらいし・もね)
1998 年生まれ、鹿児島県出身。主な出演作に、映画「舞妓はレディ」「羊と鋼の森」、ドラマ「恋はつづくよどこまでも」「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」、「記憶捜査」シリーズ、舞台「ナイツ・テイル―騎士物語―」など。NHK では、大河ドラマ「西郷どん」「青天を衝け」などに出演。
*上白石萌音さんの初エッセイ集『いろいろ』も好評発売中!