「ゲームがやめられない!」「ぼくのやる気のスイッチはどこに?」「心ってどこにあるの?」──。子どもたちから寄せられた「なぜ」「どうして」に、‟科学とユーモア“で全力回答!
「本がひらく」で2019年7月から7回にわたり連載した「そのモヤモヤ、かいけつします」に、新たなエピソードを加えた書籍が、6月25日(木)に発売されます! その名も『モヤモヤそうだんクリニック』。池谷裕二先生とヨシタケシンスケさんというゴールデンコンビが、子どもたちのモヤモヤに真剣に向き合います。集中力、暗記力、AI、ゲーム、ルール、遺伝、睡眠、嫉妬、夢……。2人へのそうだんは、じつに多岐にわたります。はたして、子どもたちのモヤモヤは解決するのでしょうか。刊行を記念し、とっておきの一話を公開します。
答える人&一緒に考えてイラストを描く人
【写真左】池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
1970年生まれ。薬学博士。脳研究者。米・コロンビア大学客員研究員を経て、2014年より東京大学薬学部教授。専門分野は神経生理学で、脳やAIに関する研究に取り組んでいる。『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』『パパは脳研究者』、共著に『海馬 脳は疲れない』など著作多数。
【写真右】ヨシタケシンスケ
1973年生まれ。絵本作家・イラストレーター。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。スケッチ集や、書籍の挿画、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。著書に『りんごかもしれない』『もう ぬげない』『あるかしら書店』『もしものせかい』など。
そうだん
「いつまでも恐怖心をなくすことができません。新しいことをするときも、チャレンジしようという気が起きず、こわがってしまいます。なぜですか?」――ヨウコP(5年)
ヨウコPさん、こわがったっていいんです! 恐怖心があるのは、かしこさの裏返し。物事をこわがらずにどんどん突き進んでしまうほうが、むしろ危ういのです。
たとえば、シマウマが、目の前にいるライオンをおそれずに近づいていったら、ガブッとやられちゃうかもしれない。こわがることは、ぼくたち動物が身を守るために欠かせない能力です。
新しいことにチャレンジしようとするとき、どうして気持ちにブレーキがかかるのか――。それは、何が起きるかが「見えない」からです。電灯がない暗い道を歩くのと、見晴らしがいい草原を歩くのとでは、気分がまったくちがうでしょ。「見える」「先まで見渡せる」ということは、確実に恐怖心や不安感をやわらげます。
こわいという気持ちが生まれたら、紙とえんぴつを持って、そのこわさはいったいどういうものなのか、なるべく具体的に書き出してみましょう。これをここでは「見える化」といいます。
たとえば、スキーにチャレンジするときなどは「はじめてなので、うまくすべる自信がない」「転んだらみんなに笑われるだろうか」など、不安に感じたことを書き出してみるのです。
この見える化に効果があることを示した実験があります。それによると、試験の直前にテスト科目のどこがどう苦手かという不安を具体的に書き出すと、緊張がほぐれて点数が10パーセントほど上がったといいます。「かけ算と割り算の組み合わせが苦手だ」「地図記号がなかなか覚えられない」というように、箇条書きにしてみるといいでしょう。
見える化のいいところは、効果が長持ちすること。毎日書き出す必要はなく、1か月に1度くらいのペースで書き出す習慣をつけるといいでしょう。
「書いた内容ほどには悪い結果にならなかった」という経験を重ねていけば、不安は小さくなっていきます。まずはお試しあれ!
《本書の構成》
モヤモヤそうだんⅠ 勉強や学校のこと
・頭がよくなる薬はありますか?
・やってきたことが身につくまでの時間ってどのくらいですか?
・勉強に集中するにはどうしたらいいですか?
・AIが発達したら計算とかやってくれるのに、なんで勉強なんかやらなくてはならないんですか?
・勉強で何回も同じまちがいをしていまいます。どうすればいいですか? など
モヤモヤそうだんⅡ 自分や友だちのこと
・ぼくの「やる気のスイッチ」はどこにあるんでしょう?
・どうしたらあまり緊張しませんか?
・朝なかなか起きられません。なぜですか?
・どうしても本を好きになれません。どうしたら好きになれますか?
・どうしたら自分に自信がもてますか? など
モヤモヤそうだんⅢ ふしぎに思うこと
・ゲームがやめられない! どうすればいい?
・心って人間のどこにあるんですか?
・お父さんやお母さんの頭のよさによって子どもの頭のよさが決まるんですか?
・遊んでいる時間はとても短く感じるのに、勉強の時間はとても長く感じます。なぜですか?
・いま目で見ているのは本当の世界じゃないかもしれないと、本で読んだのですが、本当ですか? など
了
※気に入ってくださった方は、ぜひ『モヤモヤそうだんクリニック』で続きをお楽しみください!