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読んで考える〝わたしたちのSDGs〞――地球温暖化、プラスチック汚染、経済改革……2030年の「分岐点」をまえに、いまこそ向き合いたい環境問題

 いまいたるところで耳にするSDGs(持続可能な開発目標)。SDGsとは2030年までに達成すべき17の目標であり、「極度の貧困と飢餓の撲滅」「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」など内容は多岐にわたっています。なかでも「環境の持続可能性の確保」について、日本は2030年までに温室効果ガス排出量を26パーセント削減するという目標を掲げました。世界規模の課題の「分岐点」といわれる2030年までにどうすれば危機を回避し、持続可能な未来を実現できるのでしょうか?
 世界が直面している今の状況をとらえ、SDGsを身近な問題として考える指針となる本をご紹介します。

「地球に住めなくなる日」を回避するために

 気候変動をめぐる数々の衝撃的な予測で世界的な反響を呼んだ『地球に住めなくなる日――「気候崩壊」の避けられない真実』(デイビッド・ウォレス・ウェルズ、藤井留美訳)。刊行直後から英米でベストセラーとなったほか、日本でも多くのメディアで紹介され、話題となっています。

自然ではない、こわいのは人間だ。
――中田敦彦のYouTube大学(異常気象と気候変動①)

『地球に住めなくなる日』まであと?年、絶望するより行動を!「気候崩壊」の避けられない真実
――HONZ(2020/4/27)

現状の気候変動の原因となった〝この30年のツケ〞ならなんとかなる。本書は、絶望の本ではなく希望の本として読める。
――永江 朗氏(フリーライター)
NHK「ラジオ深夜便」(2020/4/19放送)

いまこそ気候崩壊の避けられない真実を語ろう
――WIRED(2020/3/7)

 人類はかつてない気候変動の脅威にさらされています。本書の著者デイビッド・ウォレス・ウェルズは、21世紀は気候変動と温暖化に支配される時代と断言しています。この数年だけでも、頻発するゲリラ豪雨に夏の酷暑、大規模な山火事や洪水がもたらす甚大な被害の数々と、気候変動を誰もが実感しているのではないでしょうか?
 その只中で生きているわたしたちが気候変動という「強敵」について理解し、指針とすべき知識を学べるのが本書です。

 本書は一言でいうなら、「気候変動によるリアルな未来図を提示した警告の書」。「今世紀末までに日本を含むアジアの大部分が居住不可能」「平均気温が4℃上昇すると100以上の都市が浸水」といった、まさに地球に住めなくなりそうな衝撃的な事実がまとめられています。気候問題は複雑で不確かなものですが、そのなかで人々がどう向きあっていくべきかについて、膨大な調査やデータに基づく生活、社会・経済、文化における変化の例を具体的にあげながら語りかけるように解説していきます。
 著者は、「温暖化で病原体も変わる。感染症はグローバル化し、未知のウイルスとの闘いも待っているだろう」と述べています。ウイルス以外でも熱波、飢餓、大気汚染、経済崩壊など、気候変動がもたらす連鎖的な影響について取りあげているのも本書の特徴です。

『人新世の「資本論」』著者の斎藤幸平氏は「『地球に住めなくなる日』を読むと、平均気温の4℃上昇がどれほど破壊的な上昇なのかわかる」と述べています(「BRUTUS」2021.1.1・15合併号)。『地球に住めなくなる日』には、警鐘を鳴らすだけでなく、いま起きている事実を知ってより良い未来のために考えてほしいというメッセージがこめられています。そのためにかならず役立つ本となるでしょう。

地球を救う経済改革のロードマップ

『限界費用ゼロ社会』等の著書で知られる文明評論家のジェレミー・リフキン。過去3代の欧州委員会委員長、メルケル独首相をはじめ、世界各国の首脳・政府高官のアドバイザーを務めてきたリフキンが新たな経済社会のビジョンと、その実現に向けた取り組みを示した1冊が、『グローバル・グリーン・ニューディール――2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う』(幾島幸子訳)です。

 再生可能エネルギー技術の急速な発展と、危機的状況にある気候変動問題。現在は化石燃料エネルギー関連資産が過大評価される「カーボンバブル」の時代ですが、その崩壊はもはや確定的な事実。いまこそ、1930年代アメリカの「ニューディール」に匹敵する経済政策の大転換「グリーン・ニューディール」、すなわち経済インフラの脱炭素化、グリーン経済部門における雇用創出等が必要だというのが著者の主張です。

 本書は、過去20年にわたりEUおよび中国でゼロ炭素社会への移行に向けて助言を行ってきた経験に基づいて書かれています。「グリーン・ニューディールに対して、また20年という短期間にこれほど大規模な経済的転換を実現する可能性に対して懐疑的な人々にこそ、訴えかけたい」と著者は強調します。著者が関わるグローバル企業や業界――情報通信、電力、移動/ロジスティクス、建設・不動産、先進的製造業、スマート農業〔ICTやロボット、AIなどを活用した次世代型の農業〕および生命科学、金融界など――は、それが実現可能である確信を示していると。
 投資家や金融機関はすでに化石燃料関連事業への投資から撤退しつつあり、社会的責任投資への取り組みを始めています。気候変動の緩和・適応策への取り組みを重視する企業にとってはいま大きなチャンスが訪れているのです。

 公正な行動が利益を生む「社会的責任投資」の時代への大転換は大部分、市場が主導権を握っていることによって生じていると著者は強調します。ゼロ炭素の第三次産業革命の拡大を意欲的に進める国の政府は、時代を先取りするのに対し、市場原理に従って進もうとせず、化石燃料文化にしがみつく政府は低迷を余儀なくされるというのです。本書を読むことで気候変動による影響を軽減するとともに、より公正で人間的な経済をつくる経済改革の明瞭なロードマップを知ることができるでしょう。

「海洋ごみ」の実態を世界に突きつけた衝撃の書

「便利」の代名詞、プラスチックはリサイクルもされず、膨大な量が海へと流れ着きます。レジ袋を詰まらせて死ぬ海鳥、魚網を飲み込んで餓死するクジラ、プランクトンと間違ってプラスチック粒子を食べる魚……。

 2011年に刊行され(日本版は2012年刊行)、全世界に衝撃を与えた『プラスチックスープの海――北太平洋巨大ごみベルトは警告する』(海輪由香子訳)。著者のチャールズ・モアはヨットで太平洋を横断中にプラスチックごみが溜まっている海域に遭遇します。気づくと彼のヨットは、大量の微細なプラスチックが溶け込んだ海に浮かんでいました。これはのちに「太平洋ごみベルト」で知られるプラスチックごみ渦流の一部だったのです。
 それを機に、モアは私設海洋調査財団を立ち上げ、この巨大な「プラスチックスープ」の調査に乗り出しました。

 モアが太平洋ごみベルトの「発見者」となった頃、プラスチックの有毒性は一般的に知られていませんでした。モアは7日間続けて、1000海里以上に散らばる「プラスチックスープ」を目撃しており、それが直径1000海里の円形状の海域に広がっているとしたら、そこには670万トンものプラスチックがある計算となります。これは、当時アメリカ最大のごみ埋立地であるプエンテヒルズに捨てられるプラスチックごみ2年間分の総量と同じでした。

 プラスチックごみの海洋投棄は国際法で禁じられているのに、これらのごみはどこから来たのか。漂った結果、海洋生物の体内や海底、あるいはすでに汚染された砂浜に溜まるのか。それとも外洋の表面に永遠にとどまる? プラスチックスープは、記録的エル・ニーニョのせいで起きた一時的な偶然のできごとなのか、あるいは他の外洋にも同じ現象はあるのか。そして、生態系への影響とは?
 次々と湧き上がる疑問の答えを、北太平洋ごみベルトを発見した海洋環境調査研究者が、徹底解明。全人類が知るべき情報がここにあります!

これを知っても、まだペットボトルを買いますか?

 レジ袋有料化など、最近とくに身近な問題となっているプラスチックごみ対策。その解決の糸口が見つかるガイドブックが『プラスチック・フリー生活――今すぐできる小さな革命』(シャンタル・プラモンドン、ジェイ・シンハ、服部雄一郎訳)です。

 世界的に注目を集めているプラスチックごみ問題。じつは環境だけでなく、プラスチックは健康にも知らぬ間に害を及ぼしているのです。プラスチックにどのような化学物質が添加され、どのような影響を私たちの身体に与えているのか、本書ではわかりやすく解説しています。
 便利で万能なプラスチックを使わずにいるのは不可能のように思えますが、実際にはさまざまな代替品やアイデアがあります。必要なのは、ちょっとした気づきと、実行力だけ。「知識に基づく行動」と言ってもいいでしょう。

 本書は、「プラスチック・フリー」生活のガイドブックとして、生活のあらゆる場面でプラスチックを減らすための参考になります。だからといって、「すべき」と感じることの多さに途方に暮れる必要はありません。それぞれの生活の中でできることをすれば、それがいつか大きなゴールにつながるでしょう。

 本書では、簡単で効果絶大な6つのアクションをご紹介しています。レジ袋、ペットボトル、食品容器など6種類の劣悪至極なプラスチック汚染の主たち、そしてマイバッグやマイボトルを持ち歩くといった簡単な6つのアクションで、生活の中のプラスチックを80パーセント近くまで減らせる可能性があるのです。

 まずは、自分の生活にどれくらいのプラスチックが入り込んでいるかを知るために「プラスチック度」チェックをやってみましょう。『プラスチック・フリー生活』は、チェック表をはじめ、「よいマイバッグとは?」など、著者の実体験をもとにしたアイデアやちょっとした工夫に満ちています。
 プラスチックの危険性の徹底解説から、代替品を使った暮らし方のヒントまで網羅した「プラスチック・フリー」入門ガイド決定版!

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