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SFファンが選ぶ、第51回星雲賞ノンフィクション部門受賞! “戦後最大の知識人”小松左京に迫った、宮崎哲弥『NHK100分de名著 小松左京スペシャル 「神」なき時代の神話』

 2019年に発表された作品を対象とする、第51回星雲賞の受賞作品が8月22日に発表されました。星雲賞は、日本SF大会に参加する全国のSFファンの投票により決定する賞で、1970年より始まり、日本のSF及び周辺ジャンルのアワードとしては最も長い歴史を誇ります。
 今回、宮崎哲弥さんが『NHK100分de名著 小松左京スペシャル 「神」なき時代の神話』で星雲賞ノンフィクション部門を受賞しました。これを記念して、宮崎さんの受賞コメントを掲載します。
 あわせて、受賞テキストに大幅加筆・再構成した新書『いまこそ「小松左京」を読み直す』より、累計発行460万部超の大ベストセラー『日本沈没』を論じた章の抜粋と、宮崎さんの執筆の動機について書かれた「あとがき」を公開します。“戦後日本最大の知識人”小松左京を理解する一助として、ぜひご覧ください。

宮崎哲弥さん受賞コメント

 参考候補作にノミネートされただけで望外の喜びでした。もとより私の専門は仏教思想研究や政治経済の論評であり、いままでSF界とは縁もゆかりもない書き手、コメンテータに過ぎなかったからです。
 こんな部外者が、星雲賞のごとき栄えある、赫々(かっかく)たる授賞歴を誇るアワードの候補に名を連ねてしまってよいのか、と痛み入りました。まして受賞など夢寐(むび)にも思いませんでした。
 ありがとうございます。
 これもことによると、いまは純粋意識体と化して宇宙に遍在するダルマとなった小松左京氏の後押しによるものかもしれません。
「ささやかな恩返し」のつもりが、とんだ「役得」を得てしまったようです。これからさらに恩に報いていかなければならない、と心を引き締めております。
 この作品は、NHK・Eテレの番組(「100分de名著 小松左京スペシャル」)のテキストとして執筆したものですので、番組を企画、制作されたNHKおよび関連会社の人々、テキスト作成に当たって助力いただき、助言をくださった人々に感謝の意を捧げなくてはなりません。この受賞が、あなた方と分け合うべき栄誉であることはいうまでもありません。
 受賞作は番組テキストという性格から期限のある出版物といえます。先頃、私は本テキストを元に、その発展版である『いまこそ「小松左京」を読み直す』をNHK出版新書より上梓させていただきました。
 この新書には番組の企画段階では当然上がっていながら、一回二五分という時間的制約に耐え得ないと泣く泣く落とした『果しなき流れの果に』の紹介、評説が含まれております。
 これでようやく、私がテキストで明らかにしようとした、小松作品に一貫して流れる「思想」の大まかな見取り図を完成させることができました。もしこの受賞で関心を持たれた方は是非、書店で手に取ってみてください。
 本当にありがとうございます。終生の宝といたします。

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 空前の大ベストセラー『日本沈没』を論じた『いまこそ「小松左京」を読み直す』の第3章より、ベストセラーとなった背景、緻密な設定、小松左京の執筆動機などを概観する部分を抜粋しました。

本書執筆の動機を明らかにしたあとがき全文です。受賞コメントにある「ささやかな恩返し」の詳細もこちらに書かれています。

『果しなき流れの果に』を論じた書き下ろしの第2章含め、受賞テキストでは触れられなかった作品も多く取り上げた『いまこそ「小松左京」を読み直す』をぜひご覧ください。

プロフィール
宮崎哲弥(みやざき・てつや)

1962年、福岡県生まれ。評論家。相愛大学客員教授。慶應義塾大学文学部社会学科卒業。専門は仏教思想・政治哲学。サブカルチャーにも詳しい。『仏教論争――「縁起」から本質を問う』(ちくま新書)、『ごまかさない仏教――仏・法・僧から問い直す』(新潮選書、佐々木閑氏との共著)、『宮崎哲弥 仏教教理問答』(サンガ文庫)など著書多数。

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