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主演・吉沢亮(渋沢栄一役)×草彅剛(徳川慶喜役)対談――栄一あっての慶喜。慶喜あっての栄一。(大河ドラマ「青天を衝け」完結編)

 大河ドラマ「青天を衝け」は最終話に向けてラストスパート。渋沢栄一が生涯を通して関わった、徳川慶喜との物語が最後まで描かれていきます。
 10月29日(金)発売の『NHK大河ドラマ・ガイド 青天を衝け 完結編』巻頭対談では、最終巻にふさわしく吉沢さんと草彅さんが登場! これまでの撮影や相手への思いを振り返ります。当記事では、撮り下ろしビジュアルとともに、インタビュー全文をお届けします。

いつしか心が通じ合うようになっていた
栄一と慶喜

草彅 僕の周りの女性たちに亮君のファンが多くて、なんかジェラシーでさぁ(笑)。
吉沢 いやいやいやいや(笑)。
草彅 「目がきれい」って。人気がめちゃくちゃあるから共演が楽しみだったんです。会ったら本当にキラキラしている!
吉沢 僕はもう小学生のときからずっと草彅さんをテレビで見てきたので、純粋にファンです。草彅さんの出演ドラマは「僕の生きる道」などを含め、たくさん見てきましたし、主演を務められた映画「ミッドナイトスワン」も見ました。
草彅 うれしいな。「キングダム」(吉沢さんの出演映画)はまだ見ていないから見る!
吉沢 うれしいです。やっぱり初共演は緊張しましたし、どんな慶喜になるのか楽しみでした。
草彅 栄一と慶喜は不思議な関係性だよね。きっと慶喜は初めから栄一に感じるものがあったと思う。長いつきあいになるんじゃないかって。でも当初のセリフは「フン」ばかりだった。栄一が必死に話しているのに、慶喜は妙に冷めている。そのおかしみやコントラストが出るといいなと思っていました。無口な慶喜と違って栄一は……、亮君は、セリフがヤバい量だよね。
吉沢 ヤバいです。僕自身は無口なほうなんですが。
草彅 撮影以外の時間はずっとセリフを覚えてるんじゃない?
吉沢 ずっと台本を読んでいます。ノイローゼになりそう(笑)。
草彅 そうだよねぇ。リハーサルの時点でちゃんとセリフが入っているもん。亮君も「フン」ばかりだといいのにねぇ。
吉沢 そうだとありがたいけど、栄一はおしゃべりな人なので(笑)。反対に慶喜は多くを語らないから、ミステリアスで、草彅さんのお芝居もミステリアス。どんな役者さんにも役と本人のはざまが見える瞬間があって「こういう芝居をやりたいんだな」と分かるものですが、草彅さんには全くそれがない。何を考えているのか、本当に分からない。だからこっちは不安にな
るし、すごく感情を揺さぶられるんです。慶喜と重なるその魅力に引っ張られています。

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草彅 ありがとう。僕も亮君に引っ張られていて、パッションが伝わってくるんだよね。慶喜としてそれをまともに受けてもなんなので、のらりくらりとかわすけれど、どこか影響され逃げられなくなって向き合ってしまう。そんな感覚があります。
吉沢 実際、少しずつ向き合ってくれるようになった印象があります。徳川家康の遺訓を一緒に唱えるシーンとか。
草彅 慶喜が栄一をパリに送り出すシーンは、心が通じ合ういいシーンだったよね。僕はナポレオン3世からもらった軍服姿に、ちょんまげ頭。なかなかのコスプレだったよなぁ(笑)。
吉沢 あはは(笑)。
草彅 でも時代を反映しているよね。服装だけでなく、食べ物もパンやらワインやら西洋のものが入ってきた時代。僕はビスケットを食べるシーンがあったけれど、素朴な味でめちゃくちゃおいしかった。当時のビスケットを再現したらしい。大河ドラマはそういう細部の再現まで徹底しているからすごい。
吉沢 ほんと、そう思います。
草彅 栄一はパリに行っておしゃれになったよね。スーツにシルクハット姿がカッコいい。
吉沢 ただ、栄一がそんな格好をしてパリにいる間、慶喜は大変なことになっていた。手紙でしかその様子が分からない状況は演じていてもつらかったです。
草彅 大政奉還からの慶喜の行動については皆さん興味深いと思うし、歴史に疎い僕も考えました。でも結局、謎は謎のままでいいような、もしかすると慶喜本人もよく分かっていなかったような気がして、フワッとした気持ちのまま演じました。慶喜は心中を誰にも明かさなかったみたいだし、監督も深く考えなくていいと言ってくれたので。
吉沢 帰国した栄一が静岡にいる慶喜に会いに行くシーンは、最初は「上様、なんでこんな事態を招いてしまったんですか!」という気持ちでした。でも久しぶりに会った慶喜は、疲れた様子で、声に覇気もなくて。同時にどこか解放されたように見えたんです。慶喜が背負ってきたものが分かった気がして、最後のほうは泣けてきました。
草彅 あのシーンは、きれいな光がさし込むセットがスタジオに組まれていて、すがすがしい気持ちで芝居ができたんです。僕は、毎回そんなふうに現場で「こういう空気か」と感じたままに演じている。それが亮君の言うような、解放された何かにつながったのかもしれない。
吉沢 大河ドラマはプロ中のプロのスタッフが集まって創りあげている現場なので、僕も毎回現場の空気に助けられています。
草彅 衣装やメイクにも助けられるよね。僕らはデコレーションしてもらって初めてエンジンがかかる。いい仕上がりになるように、自分自身がいい土台でいなくちゃと思っています。

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吉沢 ところで、僕は大河ドラマ「新選組!」(主演・香取慎吾)を見ていました。
草彅 そっか。まぁ、僕が榎本武揚(えのもとたけあき)役で出演したのは僅かだったけどね(笑)。そういえば、慎吾に「大河ドラマ見てくれてる?」と聞いたら「見てるよ。慶喜いいよね~」とか言うんだけど、どのシーンがよかったのかを聞くと、「え〜 と……。ん?」ってごまかすんだよ。
吉沢 あははは!
草彅 毎回はぐらかされるから、本当に見ているか怪しいんだよね。あ、でもタイトルバックがカッコいいとは言っていたな。特に波の映像がいいって。
吉沢 カッコいいですよね。
草彅 亮君は、タイトルバックはスタジオで撮影したの?
吉沢 はい、360度を100台以上のカメラで囲んだ中で。
草彅 すてきな映像だよね。
吉沢 仕上がりが全く想像できないまま撮影したので、完成版を見てすごく新鮮でした。そういえば、草彅さんは能のシーンがありましたよね。
草彅 能! すごく練習したんだよ。能舞だけじゃなく謡(うたい)も一曲謡えるくらい練習したんだけど、放送はちょろっとだけ(泣)。
吉沢 あ〜。
草彅 でも僅かなシーンだからこそちゃんと練習しないとダメなんだよね。それに、本物の能の世界に触れることができたのは個人的にいい経験だった。
吉沢 慶喜が能面を外すシーンが印象的でした。子役の慶喜から、草彅さんが演じる慶喜に移るタイミングでしたよね。
草彅 懐かしいな。栄一のほうは獅子舞のシーンで子役から亮君にバトンタッチしていたね。獅子頭(ししがしら)を脱いだら大人になっていた。斬新な演出だったなぁ。
吉沢 あの序盤から、栄一の物語と慶喜の物語が並行して描かれてきて、2人が出会って思いを交わすようになって、今後はどうなっていくのか。
草彅 栄一あっての慶喜。慶喜あっての栄一。2人の物語がスペシャルなものになるといいね。
吉沢 はい。僕は、栄一が慶喜を慕う気持ちはずっと変わらなかったと思うんです。だから栄一は、慶喜の伝記を残そうと思った。慶喜に対する世間の誤解を解いて、自分が知っている魅力的な慶喜の実像を残しておきたかったんだと思います。
草彅 栄一が慶喜の伝記づくりに取り組むシーンがあるそうなので、ドキドキしています。きっと僕たちにしかできない栄一と慶喜になるんじゃないかな。
吉沢 楽しみです。栄一はいろいろな人と関係性を築いてきましたが、いちばんのキーは慶喜との関係性だと思っています。
草彅 亮君の魅力の渦に巻き込まれて演じたい。視聴者の皆さんも巻き込まれてください!
吉沢 (笑)。皆さん最後まで応援よろしくお願いします!

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取材・文=髙橋和子 撮影=平岩享
吉沢さん:ヘア&メイク=小林正憲(SHIMA)スタイリング=九(Yolken)
衣装協力=ジャケット ¥84,500 パンツ ¥41,800/以上BARENA(三喜商事 TEL03-3470-8232)
草彅さん:ヘア&メイク=荒川英亮 スタイリング=黒澤彰乃

プロフィール
吉沢 亮(よしざわ・りょう)
1994年生まれ、東京都出身。2009年、事務所主催のオーディションで受賞し、芸能界デビュー。主な出演作に、ドラマ「仮面ライダーフォーゼ」「GIVER 復讐の贈与者」「レ・ミゼラブル 終わりなき旅路」、映画「銀魂」シリーズ、「リバーズ・エッジ」「ママレード・ボーイ」「あのコの、トリコ。」「キングダム」「青くて痛くて脆い」「AWAKE」「東京リベンジャーズ」、舞台「プロデューサーズ」など。NHKでは、連続テレビ小説「なつぞら」などに出演。大河ドラマは初出演。

草彅 剛(くさなぎ・つよし)
1974年生まれ、埼玉県出身。映画「ミッドナイトスワン」で第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。主な出演作に、映画「台風家族」、舞台「家族のはなしPART1」「アルトゥロ・ウイの興隆」など。NHKでは、「未解決事件 File.06 赤報隊事件」「ペペロンチーノ」などに出演。「ブラタモリ」ではナレーションを担当している。大河ドラマは「新選組!」に出演。

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