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大河ドラマ初出演にして主演! 吉沢亮が「青天を衝け」で描く渋沢栄一像とは

 第60作目の大河ドラマ「青天を衝け」が2021年2月14日から放送スタート。ドラマの主人公・渋沢栄一が、“日本資本主義の父”になるまでの生涯が描かれます。
 当記事では、好評発売中の『NHK大河ドラマ・ガイド 青天を衝け 前編』より、主演・吉沢亮さんのインタビューを写真つきでお届けします。吉沢さんが考える渋沢栄一像や大河ドラマ初出演の意気込みなど、たっぷり語っていただきました。

企業家としての才能は若い頃からすでにあったと思う

 いつかは出演したいと思っていた大河ドラマ。その主演と聞いたときは、信じられませんでした。僕でいいのかという戸惑いはありましたが、それ以上に喜びが大きかったです。制作チームからは「渋沢栄一さんは誰もが知る偉人。そのわりに固定したイメージがないので、若々しいキャラクターを一緒につくっていきたい」という話がありました。それと、栄一さんのひ孫さんの渋沢雅英さんにお会いする機会を頂いたんです。渋沢栄一記念財団の理事長などを務めた方で、90歳を過ぎていらっしゃるのですが、もう本当にすてきな方で。お話を伺う中で、栄一さんがどれだけ愛されていたか、どれだけ器の大きい方だったのかを感じることができ、背筋が伸びました。そして、脚本の大森美香さんからは「栄一さんの人間的なかわいらしさや情けない部分も書いていくつもり」と伺いました。台本に書かれたことを僕らしく演じていけたらと思っています。
 大森さんが描く栄一はとてもチャーミング。裏表のないまっすぐな男です。多少強情っぱりのところはあるけれど、間違いに気づけばちゃんと考えを改める柔軟さを持っている。演じながら感じているのは、父親・市郎右衛門と母親・ゑいの影響です。人は「みんなが幸せなら自分も幸せ」という精神の持ち主で、栄一はその教えに触れながら成長します。市郎右衛門を見ながら学んだ藍の商いでも、ハッピーになれる方法を模索するんです。そのためには目先の利益だけでなく将来の利益を考える力が必要で、人や商品の本質を見抜く目もいる。のちに多くの企業を立ち上げる渋沢栄一さんの才能や価値観は、血洗島村にいた若い頃にすでに培われ、ずっと変わらなかったんじゃないかという気がしています。

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 中でも岡部藩の理不尽な要求に対して毅然とした態度をとるシーンは印象的でした。農民の栄一が、本来は刃向かうことのできない武士に向かって「こうするのが筋です」と、まっとうな反論をするんです。相手の立場にひるまないところがカッコいいし、僕もそんな人間でありたい。それに栄一は、理不尽にただ憤るだけではなく、「世の中のシステムがおかしいのでは」と、理不尽の背景に思いをめぐらせていく。もともとなんにでも疑問を持つ人で、知識欲を満たしてくれる尾高惇忠や長七郎のようないとこが近くにいたことも大きかったと思います。
 その尾高兄弟の影響で、栄一は攘夷思想に共鳴し、江戸に出たいと考えるようになります。きっと最初は、はやりの風潮に熱狂しているだけだったと思うんです。でも惇忠たちの話を聞いているうちに、「偉ぶっている武士よりも自分たちのほうがやれる」と考えるようになったのでは。異人街の焼き討ち計画なども描かれるので、栄一たちがどんな行動に走っていくのか、見守ってほしいと思います。

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決断の瞬間を丁寧に演じていきたい

 このドラマがおもしろいのは、栄一を軸とするストーリーと徳川慶喜を軸とするストーリーが並行して描かれるところです。この2つは世界観が全く違う。ただ、台本を読んだ印象では、慶喜は物事の本質を捉えられる人で、そこが栄一と似ている気がします。慶喜役の草彅剛さんのことは、出演されている作品を通してすばらしいお芝居をいくつも拝見してきました。実際に対面してお芝居をしたらどんな気持ちになるんだろうと、撮影前から期待をしていました。 
 先々は栄一のパリ留学も描かれると思いますが、大変なカルチャーショックだったでしょうし、「この文化を取り入れないと日本は大変なことになる。攘夷どころじゃない」という思いに駆られたのでは、と想像しています。栄一の人生は、幕府に不信感を持っていたのに幕臣になったり、攘夷思想だったのにパリに行ったりと、予測のつかないことの連続です。それが成り行き上のことでも、最終的にはみずから「この道を行く」と決断している。僕の目標は、そうした決断の瞬間を丁寧に演じていくこと。また、彼が幼い頃に培った道徳観や、権威を恐れない勇気をずっと大事に持ち続けていきたいと思っています。
 ありがたいことに、共演の皆さんは役者としても人としても尊敬する方々ばかり。大河独特の空気を楽しみながら、のびのびとやらせていただいています。

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(『NHK大河ドラマ・ガイド 青天を衝け 前編』より再録)

プロフィール

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撮影=平岩 享

吉沢 亮(よしざわ・りょう)
1994年生まれ、東京都出身。2009年、所属事務所の全国オーディションを経て、芸能界デビュー。主な出演作に、ドラマ「仮面ライダーフォーゼ」「GIVER 復讐の贈与者」、「半沢直樹」シリーズ、映画「カノジョは噓を愛しすぎてる」、「銀魂」シリーズ、「リバーズ・エッジ」「ママレード・ボーイ」「あのコの、トリコ。」「キングダム」「一度死んでみた」「青くて痛くて脆い」、舞台「プロデューサーズ」など。NHKでは、連続テレビ小説「なつぞら」などに出演。大河ドラマは初出演。

*NHK出版「大河ドラマ・ガイド 青天を衝け」公式Twitterはこちら

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