『飛べ!イサミ』コミック電子版第一期(10巻)完結記念! ここに再録!! 超ビッグ対談!! 佐藤竜雄vs長谷川裕一with 亀井芳子+桜井敏治+志津洋幸
「NHK出版コミックス×COMPASS」による電子コミック版『飛べ!イサミ』、アニメとともに刊行されてきた全10巻が、先日大団円を迎えました。
そして5月25日には1996年6月に刊行された『飛べ!イサミ メモリアル』に収載されたコミック外伝「新選組VSガンバマン」が配信されます。
そこで今回は、上記を記念して、『飛べ!イサミ メモリアル』に掲載された、アニメの佐藤竜雄監督とまんがの長谷川裕一先生の対談を、この「本がひらく」で載録いたします。
さて、対談が行われたのは1996年晩春のある土曜日。
以下、写真キャプションを除く全文を若干の加筆の上特別再掲いたします! また、作品および当時の時代背景についても注釈をまとめました。
『飛べ!イサミ』ファンのみならず、佐藤竜雄監督ファン・長谷川裕一先生ファンに捧げます!
90年代カルチャーを窺い知ることのできる貴重な記録です。ここに集ったメンバーが、当時全員20代後半~30代半ばだったことを含めて、当時の「勢い」を感じていただければ幸いです。
ついに実現! 超ビッグ対談!! 佐藤竜雄vs長谷川裕一 with 亀井芳子+桜井敏治+志津洋幸
(前略)声優さんとスタッフの方々のインタビュー(*1)を読んで、何かヘンだな、と思いませんでした? いちばん大事なあの人とあの人がいないじゃないの、って。ハイ、お待たせしました。ここから、「あの人とあの人」の対談です(実は、なんとお二人は初対面!)。
そして、これはただの対談じゃないぞ! スペシャルゲストとして、「その顔合わせの対談なら、ぜひライヴで見たい」と言う亀井芳子さん(*2)と。桜井敏治(*3)さん、そして長谷川裕一先生の元チーフアシスタントで、『イサミ』のために師匠のもとに再び駆けつけ、一年間苦楽を共にした志津洋幸さん(*4)が加わり、豪華な「イサミなトーク」(*5)となったわけです。
上の写真が、長谷川先生の仕事場でのもの。『イサミ』を創った男たちの強烈なライバル意識が感じられませんか(笑)。対談は、この写真撮影の後、千葉市内のカニ料理屋さん(*6)に場所を移して行われました。
ソウシは理性派!?
長谷川 今日はせっかくの機会なので、まず、まんが版の『イサミ』について感想を、監督にはもちろんなんですが、演じている声優さんにも、どんなものだったかいなと(笑)聞いてみたいなあ、と……前からずっと思っていたんですよ。
亀井 私はトシについては、そんなにアニメとコミックでは変わらないと思うんですね。ただ、ソウシ君の性格というか、位置づけが……。
桜井 ちょっと違うよね。
長谷川 キャラクターごとの性格づけをわりと極端にふってはいるんですけどね。だれかひとりブレーンが要るなと思ったものですから。
佐藤 そうですね。だから、その点で3人のなかでは、トシがいちばん割りを食っているかも知れません(笑)。
長谷川 本当のところもう少し(ソウシは)理性派かと思ってたんですが(笑)。
亀井 私もそう思ってました(笑)。
佐藤 いやあ、理性派というか何というか……実際やっていて、日髙(のり子)さんの(演じる)声からのイメージで決めちゃったところは、かなりあるんですけどね。理性派っぽいけど、結構ヘン、という(笑)。
長谷川 だんだんヘンなヤツになっていきましたね。
佐藤 ソウシは最初、剣道の達人っていう設定もあったんですけどね。ただ、小学生で剣道の達人ってのも無茶だよなぁ、ということで……。
――(——は編集部、以下同)それは、『しんせん組 参上!』(イサミの基になった企画の仮タイトル)の設定が生き残っちゃってる部分ですね。
佐藤 ええ。設定のことをいえば、最初のころの諸設定……僕は、『しんせん組 参上!』というアニメを今度(1995年)の4月からやるよと言われて、参加したんですが、あらかじめできていた設定が、まあ、またいかにも、型に嵌(は)めちゃったな、というものが多かったので、やりやすいように、くずしていったんですよね。そしたら、ああなって(*7)しまったという(笑)。
――監督と先生は、実は少し立場が似ていらして……。
佐藤 そうですね。お題をもらって、それを進めていくという点では、似てますね(*8)。ほぼ同時進行ですかね。
長谷川 監督がイサミの企画に入ったのは、いつごろですか。
佐藤 僕は94年の12月からです。
長谷川 僕は話が来たのが1月で、まあ、実際には2月からですね。
佐藤 立ち上がりの途中から参加したから、あらかじめの決め事ばかりなのかなと思っていたら、ほとんど決まっていなかったですね(笑)。
長谷川 進行が遅れている、というのは耳にしていました。最初に企画書を見たときは、もうちょっと「少年探偵団」ノリ(*9)の作品だと思っていたんですが。
佐藤 少年探偵団の内容にするにしては、話の筋立上で決まっていないことが多すぎたんです(笑)。これではすぐにネタにつまるよな、というのがミエミエだったんですね。
長谷川 なるほど。
佐藤 大筋として設定を決めてはいても、(少年)探偵団モノというのは、仕掛けとかいろいろ……。
長谷川 アイデアの部分ですね。
佐藤 その辺が、序盤ですでにお手上げ状態だったんです。アニメの場合は、どうしても“ライヴ感覚”というのがありますからね……。いや、今「アニメはライヴだ」って言うと評判が悪かったりする(*10)んですが(爆笑)、ただ現場で動かしていかないと、どうしようもない、というのはこれまた事実なわけで、やっぱりライヴなんですよね、作品というのは。
アニメはやはりライヴ
長谷川 特にオリジナルのものを作っていく時は何回か実際に動かしてみないと感じがつかめないでしょうね、それはよく分かります。マンガも描いてみないとわからないところがありますからね(笑)。
佐藤 その辺で“監督”ということでやらせてもらうからには、僕の名の下にやりますと、キャラクターを動かしていった結果が、ああなったんですがね。あらかじめ、話の枠組がきちっと決まっていたものであったら、また違った『イサミ』になっていたと思うんです。第1話はとりあえずまあちゃんとしていたんですけれど、2話以降は、もうちょっと……うーん、構成自体が…という感じだったんですよ。
亀井 2話からですか?
佐藤 大枠はとりあえず整理しても、その各論を練っている時間がない。それでどうしようかと頭を抱えたりして……。その頃はまだ杉井(ギサブロー総監督)さんがメインでいましたから、相談したら「やりたいようにやっていいよ」(笑)。まあ、アニメではよくあることなんですが、結局(制作の)現場で話を動かしてしまって、ライターさんには悪いことをしちゃったかなと。もうちょっとキッチリ、細かいところまで決めてから、とりかかっていければ良かったんですがね。まあ、万全の体制で臨めるシリーズなんてのは、まずめったにないんでしょうが。
最初からグチになってしまいましたね(笑)。申し訳ない。
長谷川 めったにそう上手く滑り出す話はないでしょう。マンガの連載も似たりよったりで、「とりあえず初回描くべぇ」という感じで始まるんですよ(笑)。
桜井 そんなもんなんですか。
長谷川 そんなもんなんですよ(笑)。
――-監督がご覧になった、コミックスの『イサミ』の感想というのは?
佐藤 いやあ、楽しませてもらいました(笑)。
長谷川 そう言っていただけると、何よりです。かなり好き勝手やらせてもらいましたからね(笑)。
佐藤 ヘンに(アニメを)なぞってしまうと、マンガにすると、つまらないかなという気がしていたもので、あれぐらい膨らませて、変えてもらえれば、ある程度話が違ってても読んでいる側が楽しいですからね。昔の“グレートマジンガー”(*11)とか“鋼鉄ジーグ”(*12)とか……。
長谷川 昔の『冒険王』(*13)のノリね。“マジンガーZ”(*14)とか。
佐藤 ハイ、そうですそうです(笑)。
長谷川 何か全然違う話になってきたなあ(爆笑)。
佐藤 ああいうのも、まあマンガが面白いからいいや、というのはありましたよね。
長谷川 いや、実は今だから白状すると、『イサミ』の仕事を引き受けるときに、ある程度、昔の『冒険王』なんかでやっていたテレビマンガのノリを参考に、というか目安にしたんですよ。「これくらいまでは(アニメとマンガで、内容が)変わっていても、同じ作品に見えるな」というところをですね(笑)。
亀井 へぇーっ。そうだったんですね。
長谷川 「この辺まで行くと、もう同じものに見えない」という実例があって、それを僕は一読者として経験しているから(笑)、それを自分なりの基準値にしていたというのはあるんですよ。
桜井 ちょっと自分たちがやっていたのとは、違った『イサミ』かな、というのはありましたね。でも、読者としては楽しかったですけどね。
長谷川 ちょっと重助・平助(*15)は、出番が少なくって申し訳ない(笑)。
桜井 僕らはあんまり出番がないんですよ。アニメのほうも(笑)。
佐藤 アニメの1話目であんなに平助・重助に話をふっといてね。「これは秘密にしとくんだ」って言っておいて、秘密にしたまま忘れちゃったという(笑)。
――あそこで秘密にしなかったら、あっさり3回ぐらいで全部決着がついてしまったりして(爆笑)。
佐藤 第1話以降しばらく、イサミたちと黒天狗党との直接の絡みはまるでなかったんですよね。「黒天狗の影を追え」というサブタイトルの回(第3話)でも、全然追っていないじゃないか、って(笑)。それはなぜかというとですね、とりあえず”黒天狗”っていうのを入れておけという、杉井さんの豪快な考えがあったんですよ。
長谷川 どういうことですか?
佐藤 立ち上がり当初は、“ご近所探偵団もの”のノリで話を進めてたんですが、杉井さんが「何かつまんないから、悪いのを出そうよ」ということで「いいや黒天狗党で」(笑)。
長谷川 じゃあ最初はいなかった。
佐藤 話を聞くと、そうですね。イサミたちも何と最初は幼稚園児。
長谷川 へえ、それはすごい(笑)。
佐藤 幼稚園児だとあまりに行動範囲が狭くなるからというので、小学生になったんです。ちなみに、マウンテンバイクを主張したのは僕です。自分が乗っているから(笑)。イサミのスパッツも僕の意見ですけど、これは別に自分がはいているからではないんですが(爆笑)。
自転車は大変なんです
長谷川 僕も実は主人公に自転車を使わせるの好きなんです。ただ……。
志津 もう自転車が出てきたら大変で、ウチのあるアシスタントが『イサミ』を始めたときに、「先生、この自転車はずっと出てくるんですか」って訊いて、先生が、「うん、そうみたいだね」って答えたら、席でボソっと、「こんなの、ブッ壊れちまえばいいんだ」って(爆笑)。
佐藤 ああ、それ分かるなあ(笑)。作画のほうも辛そうでした。だから時間がなくなってくると自転車のシーンが減っていくという。
亀井 ああ分かった! だから自転車のシーンのとき上半身だけってのが多かったんだ(爆笑)。
佐藤 そう、ロングだと大変だから。
亀井 アニメと、いちばん変わっちゃったのが、四天王ですよね。特に、からくり天狗。
桜井 本当にカラクリだったという。
長谷川 あれは正直、ゴメン(笑)。
佐藤 いやあ、あれはあれで面白いからいいや、と思っていたんですけどね。
長谷川 四天王の性格をちゃんとつかむ前に、アニメに合わせて出しておこうかと思ったんですよね。ちょっと危険だけど、出しちゃえ、と。そうしたら、ああいうふうに(笑)。
佐藤 まあ、イサミによって周りの人間が幸せになっていくというのが基本のコンセプトですから、大枠が変わらなければねえ……って、すごくゴマすってるみたいだなあ(笑)。
長谷川 設定が変わって怒られるのは主人公の側(の設定)で、敵方はまあいいかな、と思っていたんですけど。
――菊丸クンが最後までコミック版には出ませんでしたね。
長谷川 テレビアニメ版のデビルマンに、飛鳥涼が出ていなかったように(笑)。いや、菊丸クンは、最初出てきたとき、役割が読めなかったんですよ。役割がハッキリしたら出そうかなと思っていたら、機を逸してしまいました。
佐藤 こちらも読めてませんでしたから。最初は、まあ美少年を出そうという感じだったですよ(笑)。
桜井 裏四天王(*16)はどうなったんですかね。
佐藤 四天王のほうのエピソードに時間を取られていくうちに……。
桜井 終わってしまったんですね。
佐藤 夏のイサミスペシャル(*17)の時にその話をして、でもあれは単なる僕の冗談だと思われていたみたいですね、スタッフには。アニメの最終回に出そうかとも考えたんですね。全部話が決着したところにようやく現れて、出てきただけで終わっちゃう、というのを。でもそれをオチに使ったらあまりに不謹慎かな、”ひょうきん族”(*18)じゃないんだから(爆笑)って、やめたんです。
長谷川 『メモリアル』のコミック外伝に、裏四天王を出すんですが……。
佐藤 二人しか設定作ってないですね。せっかく描いていただけるのでしたら、あと二人分作ります。
長谷川 よろしくねっ(笑)。
亀井 銀天狗もアニメとマンガでは、違いますよね。
長谷川 最初もらった設定に、「四天王一の実力者」とあったもんで……。
佐藤 ええ、そう書きました(笑)。
長谷川 そうしたらアニメではあんな人が出てきて(笑)。
桜井 なんなんだコイツはと。小野健一(*19)さんが演(や)って、余計にヘンな人になっちゃいましたから(笑)。
亀井 ゴールデン天狗もズボン下がってきちゃうし。
佐藤 あれの元ネタが分からない人が多いみたいですね、さすがに。
長谷川 東京コミックショウ(*20)ですね。
志津 レッドスネークカモン。“大正テレビ寄席”(*21)とか出てましたね(爆笑)。
それって、ライオン丸⁉
長谷川 あと、読者からのおハガキに、「ヨロイ天狗の胸にはなぜ”心”って書いてあるんですか」というのがときどきあって、そんなの……。
佐藤・長谷川 (同時に)“ライオン丸”(*21)のパロディだよね(爆笑)。
桜井 あっ、そうか! 懐かしいなあ。
佐藤 コミック第9巻に美少女戦隊新選組の話があったじゃないですか。あれは、やらなきゃなあ、と思っていたことなんですよ。あとは、「タイムスリップ」(第4巻)とか「ニセ新選組」(第7巻)の話とかロボット対戦(第10巻)とか、アニメでやろうとしてできなかったことを非常に軽やかに長谷川先生が描いているから、その辺はうらやましいな、というか悔しいな、というか(笑)。
長谷川 でもロボットは新オープニング(*23)に出てきたから、出したんですよ。
佐藤 いや、やりたいなと思って、見切り発車的に出したんです。時間などのいろんな制約があって……なんでも時間のせいにしちゃいけないんですが、できなかったんです。だからアニメの第49話のケイのシーン(*24)は、まあちょっとした抵抗みたいな感じだったんですが。
志津 新オープニングを初めて見たとき、長谷川先生は頭抱えてたんですよ。「ロボットが追いかけてくるー」って(爆笑)。
長谷川 今まではSFものの作品が多くて、最初に『イサミ』の企画を打診されたときは、“ご近所探偵もの”だと思って、ちょうどそういう話を描いてみたいと考えていたところだったので、引き受けたんです。そしたら、途中から宇宙人や宇宙船の設定が出てくるわ、ロボットが出てくるわで……。
佐藤 きわめて長谷川先生らしい世界になってしまったという(笑)。
長谷川 知人に何度かきかれたんですよ。「長谷川さん、アニメの方も絡んでるの?」。いやあ、関係ない関係ないって答えていたんですが(笑)。
桜井 ロボットの話はアニメでもやって欲しかったですねぇ(*25)。いつ出てくるのか楽しみにしてたのに。コミックであれがイサミの家だって初めて分かったんですから(笑)。
佐藤”暴走路線”の謎
長谷川 途中から、ギャグっ気が強くなったじゃないですか(*26)。いわゆる佐藤監督の“暴走路線”と世間で言われている(笑)。あれを見て、しまったこうきたか、と思いましてね。もう少しシリアスになるだろうと予想して話を進めていたものですから。
佐藤 初期の話は、あまり先の事を考えずに食い散らかし気味になっていたんですね。これをシリーズとしてまとめていくのは、結構たいへんだなということで、軌道修正をはかったんです。まあ僕は善悪というのは相対的なものにしか過ぎないよね、と思っていることもあって、ギャグっ気を強くしたんです。監督が率先して枠組を大きくとっていかないと、他の演出陣がどうしても萎縮してしまうので、思いっきり遊んでみたりしたんです。
長谷川 それでこれはイカンということで、ギャグっぽい話と、シリアスな話を交互に来るように、こちらの軌道も若干変えたんですよ。それと、これも今だから白状しますけど、前々から一度少年もののパターンのおさらいをやってみたかったんで、いろいろなストーリーを試してみたんです。まだ結構いけるな、と思いました。
佐藤 少年冒険ものは燃えるんですよね。だからマンガのほうは直球で、アニメのほうはものすごい変化球だ、って。自分で言ってどうするんでしょう(爆笑)。まあ、珍しい形で、いい相互補完ができていましたね。
亀井 コミックは順調に出ましたね。
長谷川 まあ、こんなペースで日本では単行本の描き下ろしを出したケースはないんじゃないでしょうか。まんが家仲間に、「もし最後まで倒れずに『イサミ』を完了させたら、ホメてくれる?」って話を、去年の春にしたことがあって、そしたらみんな「ホメるホメる」。
今度ホメてもらおうと思って(笑)。
亀井 毎月(*27)ですものね。すごいなあ!
――続編を、アニメにもコミックにも期待しているファンの声がものすごく多いんですが。
亀井 そう、続編やりましょうよ。
桜井 本当に。やりたいですよ。
続編は、まーかせて♪
佐藤 いいですね。まだやりたいことや、やり残していることはたくさんありますから。
――アニメとコミック版では終わり方が違うんですが、その辺は……。
長谷川 それはもう何とでもなりますよ。僕は読切の予定だったマンガを10年続けたことがありますから。
佐藤 えっ!? 『マップス』(*28)って読切だったんですか。
長谷川 そうなんですよ。ちょっと編集部との連絡の行き違いがありまして、読切のつもりで描いて掲載誌を見たら、「マップス・次号をお楽しみに」って書いてあって、「ゲッ!! なんだこれは聞いてないぞ」(笑)。
――じゃあ、心配ないですね。
志津 いやあ、どういうペースで出すんですか。もう毎月はさすがにきついんじゃないかな(笑)。
長谷川 まあ、そうですね。でもアイデアはいっぱいあるから、大丈夫(*29)。
佐藤 もうすこしいい環境でもってテレビシリーズができればベストですが、OVAや、ラジオドラマ・CDドラマ(*30)ででも、作ってみたいですね。
長谷川 コミックのほうは任せてよ、という感じで。
佐藤 では我々は準備OKですね。
亀井 楽しみにしてまーす(笑)。
――こちらも努力します。今日はみなさんありがとうございました。
『飛べ!イサミ』全10巻
長谷川裕一(はせがわ・ゆういち)
まんが家。作品に『マップス』シリーズ、『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズ、『クロノアイズ』シリーズ、『轟世剣ダイ・ソード』『無人惑星サヴァイブ』『鉄人28号 皇帝の紋章』『マン・バイト 蒼空猟域』など。東映スーパー戦隊シリーズをSF考証した「すごかが」シリーズの集大成『グレート合体愛蔵版 すごい科学で守ります!』が小社より発売中。
佐藤竜雄(さとう・たつお)
アニメーション監督。現在放送中の『多数欠』(シリーズ構成も)をはじめ、『機動戦艦ナデシコ』『ねこぢる草』『学園戦記ムリョウ』『宇宙のステルヴィア』『獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇』『十兵衛ちゃん2』『TOKYO TRIBE2』『モーレツ宇宙海賊』『シゴフミ』『魔弾の王と戦姫』など監督作品多数。
亀井芳子(かめい・よしこ)
『飛べ!イサミ』ではイサミ・ソウシとともに「新選組」の一人で、「バーチャル戦隊ガンバマン」(と「魔法の少女ウルウルラブリン」)を愛する熱血少年トシ役を演じる。
https://mausu.net/talent/kamei-yoshiko.html
桜井敏治(さくらい・としはる)
『飛べ!イサミ』では「給料バーン」「ボーナスバーン」を夢見る黒天狗党の見習い工作員・カラス天狗59号の弟分63号の「重助」役を演じる。
https://www.81produce.co.jp/(https://x.gd/DFAje )
志津洋幸(しづ・ひろゆき)
長谷川裕一のチーフ・アシスタントを経て花笠ヒロのペンネームでデビュー。その後、しづ洋幸名義などでも活躍。
ⒸNHK・NEP(アニメ)※アニメ関連の画像はすべて『飛べ!イサミ』メモリアルより引用。
Ⓒ長谷川裕一/NHK・NEP(まんが)
*1 『飛べ!イサミ メモリアル』に掲載された、主なキャスト・スタッフからのインタビューコメント集。
*2 本稿末のプロフィール参照。
*3 同上
*4 同上
*5 当時、『飛べ!イサミ』を各種メディアで紹介する際は、「イサミな○○」というように、「イサミ」を形容動詞的に用いることが頻繁であった。
*6 佐藤監督のプロフィールコメント(当時)に「カニがうまかった」とあるのはこのため。ちなみに下の写真はそのカニ料理店でのもの。写真が粗いのは写真そのものもネガも見つからないため誌面からスキャンしたことによる。撮影者は編集部です。
*7 後段の「佐藤“暴走路線の謎”」の項を参照。
*8 2023年6月に行われた長谷川裕一氏と西川伸司氏との対談イベントでは、長谷川氏も同様の発言をしている。
*9 もともとは江戸川乱歩作品の「明智小五郎シリーズ」に登場する探偵団のことを指すが、その後、たとえば『名探偵コナン』に代表されるように、子どもたちが名探偵を志向する数多くの「少年探偵団」が登場、あるいは活躍する作品が世に現れ続けている。
*10 1996年当時に大ブームとなった某アニメーション作品のテレビシリーズにおいて、その関係者が語って「パソコン通信」場などで物議を醸した発言を指す。
*11 1974~75年にフジテレビをキー局に放送された、原作:永井豪とダイナミックプロ/制作:東映動画のロボットアニメ。放送に並行して、永井豪氏とダイナミックプロによる「テレビマガジン」(講談社)での読み切りコミカライズ、桜多吾作氏による『冒険王』(秋田書店、*13で後述)によるコミカライズなどが連載された。
*12 1975~76年にNET(現・テレビ朝日)をキー局に放送された原作:永井豪・安田達矢とダイナミック企画/制作:東映動画によるロボットアニメ。放送に並行して、安田達矢氏とダイナミックプロによるコミカライズが「テレビマガジン」で、桜多吾作氏とプロダクション・アドベンチャーによるコミカライズが「テレビランド」(徳間書店)で、松本めぐむ(のちの尾瀬あきら)氏によるコミカライズが「冒険王」で連載されるなどした。
*13 1949~83年に秋田書店が刊行していた月刊漫画雑誌で、本稿でたびたび言及されるように、70年代前半から、テレビアニメや特撮番組と組んだコミカライズが同誌のメインとなっていった。すがやみつる氏が手掛けた『仮面ライダー』シリーズや松本零士氏による『宇宙戦艦ヤマト』がなかでも有名。2023年1月に訃報が伝えられた桜多吾作氏によるロボットアニメのコミカライズは、先述のように多くのクリエイターにも影響を与えていたことが、X(旧ツイッター)などのSNSで明らかになっている。
*14 1972年~74年にフジテレビをキー局として放送された、原作;永井豪とダイナミックプロ、制作:東映動画によるロボットアニメシリーズ(とその“主役”である巨大ロボットの名称)。永井豪氏本人による連載のほか、桜多吾作氏による「冒険王」「テレビマガジン」での連載など、多数の漫画・コミカライズが存在する。本作のメディアミックス展開による大ヒットが「ロボットアニメ」のカテゴリーをつくったと言える作品である。*11の「グレートマジンガ―」は本作の次作に当たる。
*15 『飛べ!イサミ』に登場した“悪”の組織「黒天狗党」の下級(見習い)構成員。平助(声:亀山助清氏)が「カラス天狗59号」、重助(声・桜井敏治氏)が「カラス天狗63号」のコードナンバーを持つことからも明らかなように、平助が兄貴分である。さらに上役である黒天狗党の女性構成員「カラス天狗7号」もともに行動することも多く、その場合はいわゆる「三悪」としての役割を担っていた。
*16 下記*17を参照。
*17 1995年8月19日に放送された特別番組。この8月には、5日・12日・26日にも午前9時~9時30分に「テレビスペシャル」が放送され、本編のセレクション再放送約25分と、日髙のり子氏をMC、中嶋美智代氏・亀井芳子氏・佐藤竜雄氏・主題歌を歌うKAKO氏らをゲストにした「イサミファンくらぶ」約5分が放送された。19日の放送で、本稿にある「黒天狗党組織図」のパネルを佐藤氏が紹介、そこで初めて「裏四天王」の存在が明かされたが、対談本稿にもあるようにアニメ本編での登場はなかった。2024年5月配信開始予定のコミック外伝「新選組VSガンバマン」では、長谷川氏が見事に「裏四天王」を活かしている。お楽しみにっ!!
ちなみに下記は「新選組VSガンバマン」に登場する「監督」。
*18 「オレたちひょうきん族」。1981~1989年に、毎週土曜日午後8時からフジテレビが制作し放送されたバラエティ番組。漫才ブームで人気を博した芸人たちを中心に「内輪受け」「アドリブ」「ハプニング」多数取り込むことで、裏番組の「8時だョ!全員集合」(TBS)とは異なった、こんにちのバラエティ番組に連なる流れの源流となった番組。ちなみに本稿で指摘されているのは、今日でいうところの「出オチ」(登場した瞬間がすでに笑いを取る状態であること、出たそばからオチがついていること)を指し、これも同番組で多用されるようになったスタイルである。
*19 日本の俳優・声優。https://rushstyle.net/talent/kenichi_ono/ 『飛べ!イサミ』では銀天狗だけではなくイサミの叔父で警察官の坂本数馬役も演じた。『機動戦艦ナデシコ』のプロスペクターや海燕ジョー、『学園戦記ムリョウ』のジルトーシュや川森篤など、佐藤竜雄監督作品への出演も多い。
*20 浅草の伝説的コメディアン・ショパン猪狩氏とその相方(長い期間を妻の猪狩千重子氏が務めた)が、マジックとコメディの両方の要素を取り入れた芸で有名なコンビ。「レッドスネーク、カモン」と言ってショパン氏が笛を吹くと舞台上に設えた籠から赤(ときには赤でない)蛇が飛び出してくるという定番のネタがあった。ゴールデン天狗の衣装はショパン氏のステージ衣装をモチーフにしている。
*21 1963~78年にNET→テレビ朝日をキー局に放送された一社提供の製薬会社の社名を冠にした、東京の演芸を中心にした寄席(東急文化会館)からの中継をベースにしたお笑い番組。出演する芸人も東京の寄席や劇場から輩出された人気のある落語家・コメディアンが多数を占めた。
*22 1972~73年にフジテレビをキー局に放送された、原作:うしおそうじ氏/制作:ビー・プロダクションによるテレビ特撮時代劇。主人公・獅子丸が偉大な忍者・果心居士の遺志を継いで、深紅の鎧を身にまとったライオンに変身して悪と闘う。その胸には大きく「心」と記されている。
*23 テレビアニメ『飛べ!イサミ』第26話以降のオープニングの最終カットで登場する、どう見てもロボットとしか思えない巨大なシルエットのこと。詳しくは各映像配信プラットフォームで配信中のアニメ『飛べ!イサミ』をみんなで見よう!
*24 最終回の1話前で、イサミたちとイサミの祖父・観柳斎とイサミたちの担任・はるか先生が“ドライブ”(実際は黒天狗党の本部への乗り込み)に出かけ置いてけぼりを喰らった、トシの弟・ケイが、秘密基地でどうやら花丘家の家屋そのものがロボットかも?という起動ボタンを押してしまったシーンを指す。実際にはロボットはアニメには登場しなかった。
*25 *30を参照。
*26 具体的に作品の方向性を大きく整えたのは第15話「コリない怪人クモ男」の絵コンテを監督の佐藤氏が自ら手掛けたことによって、以降の各話でのテンポやギャグの方向性が固まり、メタ作品としての「バーチャル戦隊ガンバマン」「魔法の少女ウルウルラブリン」がより有効に機能するようになったことを指す。
*27 実際には当時の長谷川氏は「轟世剣ダイ・ソード」「機動戦士クロスボーン・ガンダム」と、月刊誌に2つの連載合計60余ページを続けながら、描きおろしで『飛べ!イサミ』全10巻を1995年7月~96年5月にかけて上梓した。
*28 長谷川裕一氏の代表作の一つで、長谷川氏の名を世に知らしめたSF漫画。1985~94年の10年間「月刊コミックNORA」(学研)で連載された。のちの2007~12年には続編である『マップス ネクストシート』も月刊連載された。
*29 この発言は後に具現化され、この対談の翌1997年、2月からまたもや3か月連続で、中学生になったイサミたちの新たな活躍を描く『飛べ!イサミ ダッシュ』全3巻が小社より刊行された。今年(2024年)6月~8月には「ダッシュ」も随時配信予定。
*30 このドラマCDも具現化され、1997年7月に「ドラマCD『飛べ!イサミ Forever 最後の夏休み』」として小社より刊行された。 https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000392951997.html 現在完全品切れ扱いであるが、いずれ何らかの形で聞いていただける機会をつくりたいと考えている。
(以上、注釈は編集部による)