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わたしの休日に〝午前中〟は存在しない――上白石萌音の「ぐうたら」な休日

 2021年9月に発売された上白石萌音さんの初エッセイ集『いろいろ』。好評を博し、累計発行部数7万部を突破した本書が、このたび初めての海外翻訳出版として、台湾で本日発売されます。それを記念して、『いろいろ』からエッセイ「オフる」を公開いたします。
 *同じく『いろいろ』からのエッセイ「視る」の試し読みはこちらです。


オフる

 会話のとっかかりの定番、「休日は何をしているんですか」。
 いつも当たり障りのない回答をするけれど、ここには本当のわたしの姿を記しておくとしよう。
 先に断っておくと、これからお読みいただくのは、課題も締め切りも覚えるセリフも何もない時の、《ぐうたらバージョン》である。
 まず、寝たいだけ寝る。アラームをかけずに限界まで。〝寝溜め〟は科学的に存在しないという記事を読んだことがあるけれど、科学的にはそうだとしてもわたし的には存在する。これは気持ちの問題だ。
 起きる。寝たいだけ寝ようと決めたのは自分なのに、置き時計を見て愕然がくぜんとする。基本的に、わたしの休日に〝午前中〟は存在しない。
 ブランチと呼ぶには遅すぎて、ランチと呼ぶにはゆるすぎる食事をぼんやり作り、ぼうっとしたまま食べる。
 そしてひたすら怠ける。ソファで録画を見たり、不意に歌ってみたり、床に転がって本を読みふけったり。それに飽きたら昼寝をする。さっきまで寝ていたのに。これに関しては自分でも少しおかしいと思う。
 そうこうしているうちに日が暮れる。さすがに怠惰が過ぎる、と奮い立つ。そして洗濯機を回しただけですっかり満足してまたソファに戻る。こうして一日が終わっていく。
 この前、現場で支度中にメイクさんが「オフってさ、前日の夜が一番盛り上がるよね」と言った。ああ、正論だ。「明日は八時に起きて朝ごはん食べに行って、映画観て買い物してマッサージに寄って帰って家事片付けて台本読んで夜十時には寝よう!」そう思っている時が一番楽しい。しかし往々にしてこの理想は現実にはならない。机上の空論。広げすぎた大風呂敷。
 保身のためにもう一度断っておくと、これはあくまで《ぐうたらバージョン》だ。全部が計画通りに進む、《素敵女子バージョン》も時には存在するということをしっかり頭に入れておいていただきたい。でもなんだかんだ言って、ここに書いたのがわたしにとっての最高の休日だったりする。
 明日からまた頑張るのだから。ぐうたらして何が悪い。

撮影=上白石萌音

※この続きは『いろいろ』でお楽しみください。

プロフィール
上白石萌音(かみしらいし・もね)

1998年、鹿児島県生まれ。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞受賞。ドラマ「ホクサイと飯さえあれば」「恋はつづくよどこまでも」「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」「カムカムエヴリバディ」、映画「舞妓はレディ」「君の名は。」、舞台「組曲虐殺」「ナイツ・テイル―騎士物語―」「千と千尋の神隠し」「ダディ・ロング・レッグズ」「ジェーン・エア」など出演多数。俳優のほかに、歌手やナレーター、声優などの分野でも幅広く活躍。24年には、主演映画「夜明けのすべて」の公開を控える。

*バナー写真 山本あゆみ

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