プーチン政権を真っ向から批判し、ロシア政府の暗部に切り込む――緊迫のドキュメンタリー映画「ナワリヌイ」6月17日より緊急公開!
本年度サンダンス映画祭にてシークレット作品として上映され、あまりに衝撃的な内容で世界的な話題を集め、観客賞とフェスティバル・フェイバリット賞をダブル受賞した映画『ナワリヌイ(原題NAVALNY)』。この緊迫のドキュメンタリー映画が、2022年6月17日(金)より新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほかにて緊急公開!
「反体制派のカリスマ」を襲った衝撃の毒殺未遂事件
SNSや調査動画などを駆使して長年プーチン政権の裏側を追求してきた反体制派指導者ナワリヌイ。「反体制派のカリスマ」として若者を中心に熱狂的に支持され、ロシア国内だけでなく、タイム誌の2012年版「世界で最も影響力のある100人」に選出されるなど国際的にも大きな注目を集めています。
映画『ナワリヌイ』で描かれるのは、ロシア政府の関与が疑われる衝撃的な毒殺未遂事件。プーチン政権の最大の敵となったナワリヌイは、不当な逮捕を繰り返され、徐々に見えない巨大な力に追い詰められていきます。そして2020年8月、彼は移動中の飛行機内で毒物によって昏睡状態に。搬送先のドイツの病院で奇跡的に回復を遂げたナワリヌイは、自ら調査チームを結成。自分に毒を盛ったのはいったい何者なのか? 暗殺未遂事件の影に潜む勢力を、信じられない手法を用いて暴いていきます……。
ナワリヌイとは何者か?
プーチンがけっしてその名前を呼ばず、もっとも恐れる存在とされるナワリヌイ。ロシア政府だけでなく国際関係にも大きな影響を及ぼす反体制派指導者について詳細に掘り下げた日本で唯一のノンフィクションが、『ナワリヌイ プーチンがもっとも恐れる男の真実』(NHK出版)です。
ナワリヌイの生い立ちから政治活動まで丹念な調査に基づき、ナワリヌイとはいったい何者なのか? そしてなぜこんなにも人気を集めるのか? 緻密な取材と多くの証言をもとに非常に深い考察をしています。ナワリヌイという人物の実像と、現代ロシア政界における彼の立ち位置などがわかりやすく理解できる内容で、映画『ナワリヌイ』をより愉しむための必読書となるでしょう。映画公開に合わせ、本書の一部を特別公開いたします!
ナワリヌイの三つの顔
アレクセイ・ナワリヌイのストーリーは三つの局面に分けて語ることができる。反汚職活動家、政治家、抗議デモの指導者だ。しかし、同一人物の三つの面は、母国を変えるために20年以上も繰り広げてきた政治闘争を縒り合わせる三本の糸にすぎない。
この三つの役割のいずれでも、ナワリヌイは一兵卒からはじめた。これらの道がどこへ続いているのかもよくわからないまま。反汚職活動をはじめた当初も、活動家ではなくただの少数株主だった。株式投資でカネを儲けたいだけだった、と彼はいっている。しかし、与えられて当然だと思っていた情報にアクセスできないとわかり、さらに、配当を受け取ってみて、不満が募った。それが闘う理由になった。まずブログをはじめ、購読者を増やし、購読者を組織化して野心とともに育てはじめた。〈株主保護センター〉や政府調達に関する汚職調査サイトのロスピル、反汚職基金(FBK)を立ち上げ、活動家ブロガーのナワリヌイはしだいに政治家のようになっていった。
実際には、活動家になる前から政治にかかわっていた。そして、政治家の世界に足を踏み出したときには希望に満ちていたが、結局、ナショナリズムとかかわったことで、ヤブロコ党の指導者層と衝突し、挫折した。しかし、政治のキャリアは代表的な反汚職ブロガーとしての地位を確立したあとにはじまり、異なるイデオロギーをもつ人々を共通の大義のもとに束ねるメッセージを見つけ、政治エリートを攻撃した。また、オンライン活動家として有名になったことが、2013年のモスクワ市長選で追い風となった。こうした政治的な成功を受けて、彼は何年ものあいだ政党登録を模索し、最終的に2018年の大統領選の選挙戦を開始した。
しかし、ナワリヌイは名が知れわたるにつれて、そして、クレムリンにとって厄介な存在になるにつれて、次々と障壁にぶち当たった。こうした困難に見舞われながら、彼は抗議活動を率いる役割を担っていく。2011〜12年の〈公正な選挙を求める運動〉では、カリスマ性と熱意を見せた。しかし、組織運営の世才はあまりなさそうだった。そのため、参謀のレオニード・ボルコフとじっくり相談し、全国ネットワークの構築に着手し、ナワリヌイのメッセージをモスクワ以外にも届け、地方の潜在力を利用しようとした。
2021年1月にロシアに帰国してからのナワリヌイについても、同じ三要素が絡み合っていたことがわかる。汚職との闘い、政治、そして抗議活動。ただし、ナワリヌイはいまや塀のなかにいる。そして、彼の運動はますます重要度を増している。
ロシア政治の現実を暴く
ナワリヌイは政治においてほしいものを勝ち取ったのか?
政界で収めた勝利をふりかえってみても、目を見張るほどの成果を挙げたとはいえないだろう。選挙での最大の成果は、2013年のモスクワ市長選で2位になったことだろうが、それさえ、他人の自叙伝の脚注に載る程度のことだ。次に大きな成果は2020年のスマート投票作戦で、ナワリヌイ自身は候補者名簿に載せてもらえなかったが、地方事務所の活動家数人を当選させ、地方議会へ送り込んだ。それも特記するほどのことではないかもしれない。
だが、ナワリヌイにとっては、はなから不利な材料しかなかった。筋の通った反対勢力は意図的に脇に追いやられるか、抑圧的な政治制度の抵抗をまともに受けていた。そんな状況でも、彼はそれだけのことを成し遂げたのだ。
ロシア人にとってはいまだもっとも重要な情報源である国営テレビに出られないのに、知名度が75パーセントもあるという事実は、長年の奮闘とあらゆる機会をとらえてメッセージを伝えてきた結果である。そして、クレムリンが都市部の中産階級と残りの地方部とで二極化を進めてきたにもかかわらず、ナワリヌイの支持が大都市圏でも、小さな街でも、田園地帯でもほぼ変わらないというのは驚くべきことだ。
ナワリヌイが目指してきたのは、偏った制度で成功することではなく、制度のひどい偏りを際立たせることなのだ。ナワリヌイは「ふつうの」政治家――候補者リストに名前が載り、政党を登録でき、地方を回って支持者に会っても逮捕されたり、毒殺されたりしない人物――になろうと奮闘することによって、その目標を達成した。政治の世界に入ろうとして、邪魔され、閉ざされたことを世に示すことで、ナワリヌイは人々にロシア政治体制の現実を直視させたのだ。
了
写真は映画『ナワリヌイ』より
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※続きは『ナワリヌイ プーチンがもっとも恐れる男の真実』でお楽しみください。
映画公開情報
6月17日(金)より新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほかで緊急ロードショー。詳細は下記サイトをご参照ください。