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「鈴川絢子のママYouTuber子育てノート」

 「国内外の鉄道の魅力を広めたい」とはじめたYouTubeが、現在ではチャンネル登録者数が79万人にものぼり、人気YouTuberとして知られる鈴川絢子さん。鈴川さんの動画が人気を得ているのは、鉄道に対する造詣の深さだけではありません。
 家族と一緒に大好きな鉄道をどうやって満喫するか、2児の母として日々の子育てをいかに楽しいものにするか。そんな子どもたちとの時間の過ごし方を、のびのびと前向きに伝える姿が、とくに鉄道好きの子どもたちを持つお母さんたちに支持され、ファンの心を離しません。当連載では、動画配信では伝えきれない子育ての工夫や想い、また、撮影のコツなどを大好きな鉄道の話を織り交ぜつつ、鈴川さんがつづっていきます。

 今日から「ママYouTuber」として、子育てについて、あれこれつづらせていただくことになりました、鈴川絢子といいます。

 YouTubeをはじめたのは2013年なので、もう7年にもなります。きっかけは、わたしが所属している吉本興業が募集した「YouTube芸人」のオーディション。「大好きな鉄道の魅力を国内外に伝えていきたいです!」とアピールして合格しました。同じころに結婚したこともあり、鉄道のさまざまな魅力をはじめ、出産レポートや家族との鉄道旅の様子などを中心に配信しています。

 「子育て」といっても、それぞれの家庭の、それぞれのかたちがありますよね。だから実は、この連載のお話をいただいたとき、わたしが書けることがあるか……と戸惑いもありました。でも、「YouTubeがお仕事なの?」「子どもたちはどう思っているの?」などなど、質問をいただくことも増えてきていました。そこで、動画ではお届けしきれていない、家族との生活や子どもたちとYouTubeのかかわり方など、少しでもみなさんのヒントになることをつづっていければと思っています。どうぞよろしくお願いします!

 今回は初回ですので、わたし自身のことについて、自己紹介も兼ねつつお話しさせてください。
 はじめに、そもそもわたしの動画を知らない方も多いと思います。よろしければご覧ください。

 こんな感じです。

 2人の息子との日常や、大好きな鉄道での旅、新発売の「プラレール」(鉄道のおもちゃです)の紹介など。とにかく好きなものについてお届けしています。

 男の子のお母さんだから、鉄道中心? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、そういうわけではなく、わたしは中学生の頃からかなりの鉄道ファン。子どもを生んだことで動画の撮り方や伝え方などは変わりましたが、発信しているテーマはYouTubeをはじめたころからあまり変わっていません(笑)。

 動画をアップしている、イチ投稿者ではあります。また、頻繁に更新しているので「YouTuber」と言われることも多いんですが、いわゆる「YouTuber」としての自覚はあまりないんです。動画を撮ってアップすることは、毎日ホームビデオを撮っているのと似ています。わたしにとっては、日々の出来事を日記に記すように自然な感覚かもしれません。

二人三脚での動画配信

 YouTubeで配信しはじめてから、今も撮影・編集しているのは……夫です。夫婦で企画を練って、夫が撮影・編集、わたしがチェックして、夫がアップという流れで、ずっとやっています。

 夫とは、動画配信のお仕事で知り合いました。話してみると、吉本の作家を養成する「YCC」に通っていて、「NSC」に通っていたわたしとなんと同期。さらに鉄道好き! 気がつけば一緒に行動することが増え、知り合ってから1年、21歳のときに結婚しました。

鈴川さん婚約時代

結婚後のお正月 名古屋市のリニア・鉄道館で 

 「結婚、早いですね」と言われることもあります。でも当時、「結婚って、どういうものなんだろう?」という興味と、好きなものが同じ。さらに、私のしたいことや仕事も理解してもらえて、かつ、それぞれのしたいことも無理せずできて。まぁ、お金はないけど、それでもなんか楽しいんじゃないかって。お互いに「この人しかいないんじゃないか」と思っていたはず(笑)。

 「結婚とはこうあるもの」というカタい感覚は、まるでなくて。「じゃあ、結婚しようか」という軽やかな気持ちだったと思うのですが、「この人しかいない」と感じたことも後押しになったかもしれません。この気持ちは、今でも同じです。

 夫婦でYouTubeをメインに生活しているのは、めずらしいかもしれませんね。でも、わたしは、あまりそう思っていなくて。やりたいことに真剣に取り組んでいたら、いつの間にかたどりついていた、という感じなんです。配信をはじめたときは、まだYouTuberという言葉も定着していなかったと思います。わたしもよくわからないままはじめて、「YouTuberになろう!」というより、鉄道の魅力をどう伝えていくかということに集中していました。

 YouTubeでも結婚でも、何かを決めるとき、直感的に「これだ!」って決めてきたところがあります。そもそもすごくハマりやすくて、熱しやすく冷めやすいところがあるんですけど、冷めずに残るものを大事にする。それが、自分にとってほんとうにいいって感じているものなんだなと捉えるようにしていて。いまの生活も、その延長にあるのかなと思います。

わたしを変えた「出会い」

 振り返ると、子どものころから、このスタンスは変わっていないような気がします。小学校までは引っ込み思案で、内気で、人見知り。物心ついたころから、一人で過ごすのが好き。インドア派で、ゲームもしていましたが、とくに読書が好きで。自分だけの世界をもつ子どもでした。

鈴川さんもうすぐ4歳

4歳間近の頃 後ろの飛行機は初代JALドリームエクスプレス 

 そんなわたしに、友人が「ミニバスしようよ」と声をかけてくれたんです。小学5年生のときです。見学して、すぐ入部。決め手は「楽しそう!」ということだけでした(笑)。

 ミニバスをはじめたわたしは、一気にスポーツ少女へ。中学校では卓球部へ入部します。このときも、バスケットより、卓球のほうが「楽しそう!」と思ったのがきっかけです。でも、この選択が、大げさかもしれませんが、わたしの後の人生に大きく影響する方との出会いをつくることになります。

 卓球にハマッたわたしは、とにかく強くなりたくて練習しました。高校へは、卓球の推薦で進学するほど、熱心に向き合いましたね。生活も性格も、グッと変わったのは中高時代の卓球部です。

 高校では、今も恩師と慕うコーチとの出会いがありました。コーチには、「自分を信じる」「決めたら貫く」「迷わない」など、決断力と心を強くもつ大切さを教えてもらったように思います。けれど、わたしが高校2年生に上がる前に亡くなられて……。コーチをインターハイに連れていくことを目標に頑張っていたので、あまりのショックで卓球への情熱が続かなくなり、辞めてしまったんです。

 高校2年生といえば、そろそろ卒業後の進路も考えないといけない時期ですが、喪失感で日々ぼんやり過ごしていました。そんなわたしを見兼ねて、友人がライブに誘ってくれるようになります。何度もライブに行くうち、音響の仕事が「カッコいい!!」と思って。興味が湧いて、母に「音響を学びたい」と直談判。といっても、それまで音楽をやってきたわけじゃないから、楽譜は読めないし、楽器もできない。試験まで時間もない。頑張って勉強しましたが、受験では小論文が頼み。結果は……無事合格。読書好きで、文章を書くことも好きで、よかったです!

 大学では、わたしの人生を変える親友との出会いがありました。10代〜20歳くらいの女の子たちは、生きてるだけで無敵! みたいなところがあると思うんですけど、当時のわたしたちも、まさにそう(笑)。2人なら最強。いつも「2人でおもしろいことをしたいね」って話をしていましたね。

 そんなある日、「大学を辞めて『NSC』へ通おう!」と2人で話し合ったんです。今思えばこれが「若さ」なのかもしれませんが、何のためらいもなく親友と一緒にNSCに行くことを決めました。「NSC」というのは、最初にお話ししましたが、吉本の芸人養成所です。でも、2人とも別にお笑い芸人を目指していたわけじゃなくて。ラジオでもなんでもいい、ただただ、2人でおもしろいことがしたかった。それだけです。

 彼女のご両親も、うちの親も、その決意を伝えたときは驚いていましたが、大きく反対されることもなく……。うちの親にとっては、内気な子どもかと思いきや、卓球に没頭したり、それを突然辞めたかと思ったら、基本もできないのに音楽を学びたいと言ったり。急に言い出してはじめるものの、そのときどきで真剣に熱中する様子を見守ってくれていたから、とくに反対しなかったのかもしれません。

 実際に、親友と一緒に大学を辞めたのは2年生に進級する前。「NSC」卒業後はコンビを組んで活動していたのですが、少しずつ、彼女とわたしの方向性がズレてきたので解散。以来、わたしは動画配信を活動の中心に、ゲームの実況中継や、好きな鉄道のことなどをアップするようになっていきました。

直感を信じる力をつくってくれた母

 こんなふうに、何かを決めるときや新しくチャレンジするとき、わたしは自分の直感を大切にしてきました。そこには「進んだ先で、いい感じでいけるんじゃないかな」っていう自信みたいなものがあった気がします。なんでそう思えるようになったのか。今回、あらためて考えてみると、たぶん母がつくってくれた環境にあるような気がします。

 航空関係の仕事をする母の影響もあって、わたしは家族旅行によく行く家庭で育ちました。国内外、物心つく前からいろんなところに連れて行ってもらい、夏の定番は北海道のニセコ旅行。毎年楽しみにしていました。

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母とバーベキューの準備中 北海道ニセコ旅行で 

 決まったホテルに泊まって、気球に乗ったり、渓流下りや魚釣りをしたり、夜は星座ウォッチング。学校では大人しいタイプでしたが、ニセコでは、毎回違ったアクティビティに積極的に参加していて。そこで得た知識とか、体験したことが、いろいろなものへの興味や、なんでもやればできるという自信につながっていったのかな、と思っています。

 ほかにも、本をたくさん買ってくれたり、ディズニーをはじめ、海外のあまり知られていないアニメ作品を見せてくれたり。楽しみながら、いろんな世界を広げてくれていたような気がします。

 いま、わたしが息子たちをいろんなところに連れて行くのも、そこからつながっているのかもしれません。違うのは、息子たちはさらに「YouTube」というものが日常にあるということ。

 長男は5歳、次男は2歳でまだ小さいですが、それぞれ性格が違って、もう独立した人間です。わたしたち夫婦なりに、いい方向に導いてあげられたらなと思っています。
 
 さてさて、少し長くなりましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。次回は、「子どもたちとYouTube」というテーマで、投稿者と視聴者、それぞれの立場から、子どもとYouTubeのかかわり方をお話しできたらと思います。

 外出するのも大変な日々が続きますが、家族とできるかぎり楽しい時間を過ごしたいですね。
 少しずつ、そんな楽しい時間が増えていきますように……。

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構成協力/ニイミユカ

プロフィール

鈴川絢子(すずかわ・あやこ)
1991年、千葉県出身。NSC東京16期生、吉本興業所属。2児の母。2013年にYouTubeで「鈴川絢子チャンネル」を開設。「恋するフォーチュンクッキー京浜急行ver.」の視聴回数190万回が話題となり、鉄道関連を中心とする動画で人気チャンネルに。その後、子連れ鉄道旅やプラレールの紹介をはじめ、家族の日常を映した動画で、鉄道好きの子ども(子鉄)を持つお母さんたちの間でさらに人気を博し、現在、79万人を超える登録者を集める。著書に『鈴川絢子とちっくんの 東京電車さんぽ』(JTBパブリッシング)、『鉄分多め。 関東編』(ヨシモトブックス)など。

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