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SF少年だった宮崎哲弥さん、喜びの受賞——第51回星雲賞授与式に寄せたビデオメッセージ

 去る7月4日(日)、第51回星雲賞のオンライン授与式(YouTubeにて配信)が開催されました。星雲賞は日本SF大会の参加者による投票で決定する賞で、1970年にスタートし、日本のSFおよび周辺ジャンルのアワードでは最も長い歴史をもっています。
 2019年に発表された作品が対象となる第51回星雲賞は昨年8月に発表され、評論家の宮崎哲弥さんが『NHK100分de名著 小松左京スペシャル 「神」なき時代の神話』の番組テキストで同賞ノンフィクション部門を受賞されました。今回のオンライン授与式に寄せられた宮崎さんのビデオメッセージ要旨を下記に掲載いたします。

宮崎哲弥さんコメント要旨

 評論家の宮崎哲弥でございます。
 このたびは、拙著「100分de名著 小松左京スペシャル」に星雲賞ノンフィクション部門の賞をいただきまして、ほんとうにありがとうございます。
 私はSF界とは何の縁もゆかりもない人間ですので、このような赫々(かっかく)たる歴史をもつ、権威のある賞をいただけるとは、夢にも思っておりませんでした。なので、感激も一入(ひとしお)でございます。
 さらにもう一つ、この作品を書いてよかったなと思ったことがあります。今回賞をいただいたのはNHKの番組のためのテキストなのですけれども、それに増補して、さらに『果しなき流れの果に』という、みなさんご承知の小松左京の傑作について書き下ろした一章を加えた新書(『いまこそ「小松左京」を読み直す』)を出しました。今回の賞をいただいたものを「テキスト版」、加筆したものを「新書版」としますと、私としては「新書版」が完全版と考えております。
 この「新書版」については、SF界の重鎮である鏡明先生に、「本の雑誌」の連載「連続的SF話」(2021年3月号)で過分のお褒めの言葉をいただきまして、それも望外の喜びでした。
 鏡明先生といえば、私が子供のころ読んだ、平井和正さんの『超革命的中学生集団』という作品に登場人物のモデルとして実名で出ておられて、そのころから横田順彌さんと鏡明さんのお名前は私の脳に貼りついて離れないものとなりました。そのような方からお褒めの言葉をいただいたということは、私にとって忘れられない一幕であります。
 この新書版(『いまこそ「小松左京」を読み直す』)も、今年の第52回星雲賞ノンフィクション部門の参考候補作に挙げていただいていますが、ともかく、「100分de名著 小松左京スペシャル」が賞をいただいたことをうれしく思っております。
 本来ならば会場に行って授与式に参加するということが筋であると思いますが、外せない用件がございまして、本日このようなビデオメッセージという形になってしまい申し訳ございません。
 受賞を喜ぶ気持ちには変わりありません。ありがとうございました。
 ――宮崎哲弥

*  *  *


 受賞コメント要旨とあわせて、受賞作に大幅加筆した新書『いまこそ「小松左京」を読み直す』の一部を公開します。
『日本沈没』を論じた第3章から、同作が累計460万部のベストセラーとなり、いまなお読み継がれている理由を分析した部分です。

 新書版執筆の動機、小松作品への思いをお書きいただいた「あとがき」の全文です。

 宮崎さんのコメントにもある『果しなき流れの果に』を論じた書き下ろしの第2章含め、「テキスト版」では触れられなかった作品も多く取り上げた『いまこそ「小松左京」を読み直す』をぜひご覧ください。

プロフィール
宮崎哲弥(みやざき・てつや)

1962年、福岡県生まれ。評論家。相愛大学客員教授。慶應義塾大学文学部社会学科卒業。専門は仏教思想・政治哲学。サブカルチャーにも詳しい。『仏教論争――「縁起」から本質を問う』(ちくま新書)、『ごまかさない仏教――仏・法・僧から問い直す』(新潮選書、佐々木閑氏との共著)、『宮崎哲弥 仏教教理問答』(サンガ文庫)など著書多数。

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