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池谷裕二+ヨシタケシンスケのそのモヤモヤ、かいけつします 第3回

質問する人
東京学芸大学附属竹早小学校3年~6年生のみなさん
答える人
池谷裕二 薬学博士。東京大学・大学院薬学系研究科・教授。48歳、しし座。好きな食べ物はたけのこ。6歳と3歳の女の子のお父さん。
いっしょに考えてイラストを描く人
ヨシタケシンスケ 絵本作家、イラストレーター。45歳、ふたご座。好きな食べ物はイカ。12歳と7歳の男の子のお父さん。

質問「どうしても本を好きになれません。どうしたら好きになれますか?」 YYさん(4年)より

質問「どうして、友だちみたいに本がいっぱい読めないのですか?」 さくちゃんさん(4年)より

質問「本にすぐあきる」 かなるんるんさん(5年)より

 「本をよく読むことで、自分を成長させていきなさい。本は著者がとても苦労して身につけたことを、たやすく手に入れさせてくれるのだ」
 みんな、学校の先生や家の人からこんなふうに言われたりしたことがあるんじゃないかな。 これ、じつは古代ギリシアの哲学者・ソクラテス(紀元前469頃ー399)の言葉なんだ。
 古代ローマの哲学者・キケロー(紀元前106―43)は、もっと熱く語っているよ。
 「書籍は青年には食物となり、老人には娯楽(ごらく)となる。病(や)めるときは装飾(そうしょく)となり、苦しいときにはなぐさめとなる。内にあっては楽しみとなり、外に持って出てもじゃまにはならない。とくに夜と旅行といなかにおいては、良い伴侶(はんりょ)となる」
 ベタボメだね。でも、ちょっと待ったー! 当時の書物はすべてが手書き。1冊1冊がとんでもなく高価で貴重だったから、身分の高い人や選ばれた人でなければ、読むことができないものだったんだ。だから、本に対する興味や読書のよろこびは、いまより大きかった可能性がある。
 でもいまの時代、ぼくたちのまわりは本や雑誌であふれている。「児童書」とよぶ、子ども向けの絵本や小説、図鑑などだけでも1年に1700冊以上の本が新たに刊行されているだって。すごい数だね。それに、インターネットでたいていのことは情報を得ることができる。そんな時代に、本はぼくたちにとって本当に大事なものなのか──。
 もう少し近年に生きた人の言葉に耳を傾けてみよう。アメリカの黒人解放指導者・マルコムX(1925―1965)はこんなことを言っているよ。
 「1冊の本に人生を丸ごと変えてしまう力があることを、みんな理解していない」
 これは経験した人しか言えない言葉だね。人生を変えてしまうほどの力をもっている1冊に出会えたら、それはめっけもの。「本が好きになれない」というYYさん、無理に本を好きにならなくてもよーし! 「すぐあきちゃう」というかなるんるんさん、つまらないと思ったら途中で読むのをやめてもよーし! 「友だちみたいに本がたくさん読めない」とういさくちゃんさん、読書量をだれかと競争する必要なーし! それよりも、いつかステキな出会いがあることを期待しながら、もっと気軽に本を手にとってみたらどうかな。

本にまつわる偉人(いじん)の名言は、ほかにもたくさんあります。それらを見くらべるなかで、おもしろい発見もありました。
●勝海舟(かつかいしゅう。江戸時代末期の幕臣/1823―1899)
 「人間の精根には限りがあるから、あまり多くの読書や学問に力をもちいると、いきおい実務のほうには、うとくなるはずだ」
●アルベルト・アインシュタイン(ドイツ生まれの理論物理学者/1879―1955)
 「ある年齢を過ぎたら、読書は精神をクリエイティブな探求(たんきゅう)から遠ざける。本をたくさん読みすぎて、自分自身の脳を使っていない人は怠惰(たいだ)な思考習慣(しこうしゅうかん)におちいる」
●フリードリヒ・ニーチェ(ドイツの哲学者/1884―1900)
 「本をめくることばかりしている学者は、ついにはものを考える能力をまったく喪失(そうしつ)する。本をめくらないときには考えない」

 表現のしかたはそれぞれだけど、同じことを言っているのがわかるよね? 「本さえ読んでりゃ、いいってもんじゃない。自分の頭をつかって考えなさい。実践しなさい」ということだね。これってすごく重要なメッセージじゃないかと思うんだ。脳研究の分野でも、脳に「入力」した情報を生かすためには、「出力」する必要があるんだ。つまり、読むという行為で得た知識や情報は、実践することによって初めて意味をもってくるんだ。
 ということで、最後に皆さんにアメリカの作家ヘンリー・ソロー(1817―1862)のことばを贈りましょう。
「真にすばらしい本は内容以上のことを教えてくれる。その本を置き、仕入れた知恵を試したくなる。読むことで、行動せずにいられなくなるのだ」

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(構成=髙橋和子)

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