見出し画像

比べると、生き物の身体のしくみと進化が見えてくる!――「キリンと人間、どこが違う?[身体のスキマ「首」の謎]」郡司芽久

 キリンと人間はまったく違う動物――それは本当でしょうか? 生き物を知るうえで比較はとても大事なのです。動物学者で「キリン博士」の郡司芽久さんが、動物の体の「形」の謎やユニークな進化について楽しく解説します。浅野文彦さんのイラストも必見!
 今回のテーマは「首」。「キリンと人間の最大の違い」とも言える「首」の奥深い謎に挑みます。
 *当記事は連載第3回です。第1回から読む方はこちらです。

「首」っていったいなんだろう?

「首が違うと思います」
 この連載の第1回が配信された日、「キリンと人間、どこが違う?」というタイトルに対する、こんなコメントを目にした。
 見てのとおり、キリンはとにかく首が長いのが特徴的な動物である。大人のキリンなら、首の長さはおよそ2メートル。胴体(肩からお尻まで)と同じくらいの長さである。首から頭までの重さは130〜180キロほどなので、キリンの首は、横綱白鵬関(192センチ、158キロ)とだいたい同じくらいのサイズだ。
 これに対し、ヒトの首はせいぜい十数センチほど。先ほど測ってみたら、私の首は11.5センチだった。重さは1キロにも満たないだろう。キリンの首は、ヒトとは比べものにならないほど巨大だ。長さも重さも異なるし、キリンの首とヒトの首はまったく似ていない。きっと、そう思う人がほとんどだろう。
 というわけで、今回のテーマは、キリンと人間の最大の違いとも言える「首」である。

「首」という器官は、第2回のテーマの「ツノ」とは違って、私たちの身体にもあるものだ。そして、第1回のテーマだった「肺」とは異なり外から見える器官なので、ほとんどの人は「首ってどこ?」と尋ねられたら指をさして答えることができるだろう。キリンの首の場所を尋ねられても、自信をもって答えられるに違いない。それでは、ブタやクジラの首ならどうだろうか? ヘビの首はどこだろうか? だんだん、どこをさしたらいいかわからなくなってきたのではないだろうか? 「首」っていったい、何だろう?
 首というのは、大雑把に言えば、「頭と肩にはさまれた〝スキマ〞」である。私たちヒトの首も、肩と頭に挟まれた領域にある。ブタやクジラも同じく、前足の付け根と頭に挟まれた小さなスペースが「首」である。ヘビのように進化の過程で足を失った生き物であっても、肩の筋肉の痕跡や腕に向かう神経の痕跡などを手がかりに「肩があったと思われる位置」を推定すれば、「首の場所」を理解することができる。
 それでは、初めて「首」ができたのはいつなのだろうか? じつは、脊椎(せきつい)動物(魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類をまとめたグループ)のなかで最も原始的なグループである魚類の仲間は、首をもたない。胸ビレの付け根にある肩の骨と頭部の骨のあいだにエラの骨があり、それらがすべてくっついて一体になっているため、首に相当する〝スキマ〞が存在しないのである。
 今から3億5000万年ほど昔、そんな魚類の仲間から、少し変わった身体構造をもつ種が現れた。「ティクターリク」という名のその魚は、魚類の仲間でありながら、私たちの腕の骨格によく似た構造をした「四肢」のようなヒレをもつなど、魚類と四肢動物の中間のような身体構造をしていた。そしてこの種では、頭部と肩をつなぐ骨の一部が欠損して、肩の骨と頭の骨が離れ、そこに小さなスキマが生じていた。これこそが、私たちヒトを含む四肢動物の「首」の起源である。
 海の中で暮らす魚たちは、水中にぷかぷかと浮いているため、体をくねらせて簡単に向きを変えることができる。一方ティクターリクは、浅瀬を生活の場として、ときには陸上にもあがっていたと考えられている。しっかりとした四肢で体を支え、浅瀬で生きていた彼らにとっては、体の向きを変えるのも一苦労だったはずだ。そんな状況下では、頭と肩のあいだにできたスキマは、胴体とは独立して頭を動かすことを可能にし、周囲をキョロキョロと見回したり、頭だけをもちあげて水面に出したりと役に立ったに違いない。
 こうして首と四肢をもつ生物が陸上へと進出し、長い時間をかけて、さまざまな生物が進化してきた。その過程で首の構造は少しずつ複雑化し、長さも多様になっていったのだ。
 キリンの長い首は高い場所に生えた葉を食べ、遠くを見渡すことを可能にした。ハクチョウは、長い首を使って湖の底に生えた水草を食べるようになった。ハゲワシは、長い首を器用に動かし、死んだ動物のお腹の中に頭を入れて食事をとる。フクロウは、折りたたまれた長い首によって頭をぐるりと回転することができる。
 その働きはさまざまだが、四肢動物が陸上のさまざまな環境に進出していく過程で、「首」は大きな役割を果たしたと考えられている。

キリンの首とヒトの首

 さて、最初に述べたように、キリンの首とヒトの首は、大きさも形も似ても似つかない。私たちは、首を横に曲げたり、ひねったり、前後に倒すことくらいしかできないが、キリンの首はもっとずっと柔軟でしなやかに動く。首を大きくたわませて自分の胸元にキスする、なんてこともやってのける。見た目も動かし方も、まったく違うものに見える。
 ところが、見方を少し変えてみると、印象はだいぶ違ってくる。じつは、キリンもヒトも、首の中にある「頸椎(けいつい)」と呼ばれる骨の数は同じなのだ。11.5センチの私の首も、2メートルのキリンの首も、中に入っている骨は7個である。

 私たちの身体の中には、軸となる1本の〝柱〞が存在している。「脊椎」と呼ばれる骨がいくつも連なりあってできた「脊柱」である。脊柱は、身体を支えて動かす基軸として機能するとともに、神経の塊である脊髄を守る役目を果たしている。
 この脊椎こそが、脊椎動物の最大の特徴だ。脊椎動物のなかには、あごがない種や手足がない種は存在しているが、脊椎をもたない種は存在しない(ただし、子供のとき脊椎の〝かけら〞のようなものが作られ、成熟する頃にはなくなってしまう種は知られている)。「脊椎をもつ」ことは、あらゆる脊椎動物の身体に共通した特徴なのである。
 前述した「頸椎」は、脊椎のうち、おもに首にあるものを指す言葉だ。哺乳類の場合、見た目の首の長さにかかわらず、頸椎は基本的に7個と決まっている。首が長いキリンも、首がないように見えるブタやクジラでも7個である。
 現在地球上に生息する哺乳類およそ6000種のなかで、頸椎が7個ではないものは、ナマケモノの仲間とマナティーの仲間だけだ。マナティーは頸椎が6個で安定しているが、ナマケモノは哺乳類の仲間としては例外的に頸椎の数が多様だ。ホフマンナマケモノは5~6個、フタユビナマケモノは基本7個、ミユビナマケモノは8~10個と、同一種内でもばらつきがある。
 ごくわずかな例外があるとはいえ、哺乳類の頸椎は基本的に7個と決まっている。地球上に哺乳類が誕生して以来ほとんどずっと、頸椎の数は変わらず7個のままなのだ。
 一方、鳥類や爬虫類では、種類によって頸椎の数が異なっている。インコの仲間は11個だし、ハクチョウの仲間では20個以上ある種もいる。カナダのアルバータ州で発見された「アルバートネクテス」という首長竜(絶滅した爬虫類の仲間)は、なんと76個の頸椎をもっていたことが知られている。
 四肢動物のなかでは最も原始的なグループである両生類では、頸椎は1つしかないため、両生類から爬虫類・鳥類・哺乳類へと進化するなかで頸椎は増えていったはずだ。ところが哺乳類では頸椎の数はまったく変わらず、鳥類や爬虫類では種ごとに大きく異なる。なぜそうなのか、その理由についてはまだよくわかっていない。とにかく哺乳類の頸椎は、基本的に7個で一定なのである。
 長さや重さはまったく違っていても、骨格の構造に注目すれば、キリンの首とヒトの首はよく似ているというわけだ。

回り道をする神経

 もうひとつ、キリンとヒトの首で似ている部分がある。首を通る「反回神経」だ。
 反回神経は、脳と喉をつなぐ神経で、喉や声帯に信号を送り、動きをコントロールする働きをもつ。ヒトのように、声を使ってコミュニケーションをとる動物にとってきわめて重要な神経だ。そしてこの神経には、少し変わった特徴がある。最短経路を通らずに、回り道をするのだ。
 脳と喉をつなぐ神経なのだから、脳から直接喉に向かうのがいちばんの近道なのだが、反回神経はそうしない。一度喉を通り過ぎ、胸元まで下りてきたあと、心臓近くの血管をくぐって折り返し、喉に向かっていくのだ。目的地の喉よりもはるか下にある心臓に一度立ち寄り、急に思い出したかのように目的地へと戻っていく。いったん通り過ぎてから回って反(かえ)るので「反回神経」という名が付けられたのだ。
 あれだけ首が長いキリンにおいても、反回神経はやはり〝遠回り〞する。2メートルの首をくだって胸までいき、血管をくぐってから、ふたたび2メートルの首を上がってきて喉にいたる。神経の全長は5〜6メートルにもなる。

画像1

 このことは、解剖学や進化生物学の専門書にも登場する「業界内ではよく知られていること」ではあるけれど、実際に解剖して〝反回〞する様子を初めて見たときはとても感動した。思わず指導教員の先生の部屋まで走って報告に行ってしまったくらいだ。知識として知ってはいても、自分の手を動かして、自分の目で直接確認するのは格別なのだ。研究中に興奮するのは、なにも新発見のときだけではない。
 それにしても、反回神経はなぜこんな遠回りをするのだろうか?

 脊椎動物のなかでも原始的なグループである魚類には、脳からエラへ向かう神経が存在する。この神経は、寄り道や遠回りをすることなくエラへと向かっているのだが、じつはこのとき「脳からエラへ向かう神経」と「心臓からエラを通って全身へ向かう血管」が交差してしまっている。
 ちょっとイメージしづらいかもしれないが、せまいキッチンに冷蔵庫や電子レンジを適当に設置して、それぞれの電源コードが交差してしまった経験がある人は多いのではないだろうか。生物の神経や血管の配置でも似たようなことが起きているのだ。
 そして、魚類から原始的な四肢動物へと進化する過程でエラはなくなり、エラがあった場所には喉や声帯ができた。エラの神経は喉の神経になり、エラの血管は心臓周囲の太い血管へとそれぞれ変化していった。それでもなお、魚類時代と変わらず、神経と血管は交差したままだった。
 鳥の仲間や絶滅した首長竜の仲間など、「頭部にある喉」と「胴体に収まった心臓」が遠く離れた場所にある生物が誕生しても、進化の過程の中で、神経と血管の交差が解消されることはなかった。魚類時代と同じように神経と血管が交差したままで、心臓と喉が離れたぶんだけ神経が長くなっていった。こうしてできたのが、脳から一度心臓に寄り道して喉へといたる「反回神経」というわけだ。

 前述の電源コードの例で言えば、電子レンジのコードだけを長く延ばして、コード同士が交差したままでレンジを別の部屋に移動したようなイメージだ。「交差を直せばいいのに!」とも思ってしまうが、生き物の身体はどんな風にでも簡単に作り変えられるわけではない。コードの配線は、プラグを引っこ抜いて絡まった部分をほどき、差し直せばいいだけだが、脳から各部位へ伸びる神経を「引っこ抜いてほどく」なんてできなさそうだ。神経を伸ばして遠回りするのがいちばん合理的かつ簡単な方法だったのかもしれない
 キリンの首にひっそりと存在する長い長い反回神経を見ていると、魚類時代から脈々と続く進化の道筋を感じて感慨深い気持ちになる。そして同時に、「ちょっと律儀すぎやしませんか?」とも思ってしまう。とはいえ、この構造がずっと変わらず受け継がれているということは、無意味な遠回りではあるけれど、機能的には問題はないということなのだろう。

8番目の〝首の骨〞

 さて、ここまで骨と神経に着目して、キリンとヒトの首がよく似た構造をもつことをお話ししてきた。しかし、あれだけ大きさが異なるのだ。何か劇的に違う部分はないのだろうか? キリンにしかないなんらかの特殊な構造があるのではないだろうか?
 私が学生時代に取り組んでいた研究は、そんな素朴な疑問から始まった。
 動物園でキリンを眺めていると、首を折り曲げて自分の胸元にキスしたり、首を大きく逸らして自分のお尻のにおいを嗅いだりと、私たちにはとてもできないような動きを頻繁にする。キリンもヒトも首の構造が似たようなものだなんて、私には信じられなかった。
 そして、解剖学と出会った大学1年生の冬から、博士号を取得するまでの9年間で、私は30頭ものキリンを解剖し、彼らが「8番目の〝首の骨〞」とも呼ぶべき奇妙な骨をもつことを発見した。キリンの頸椎は私たちと同じ7個だが、〝首の骨〞は8個あるのだ。

「8番目の〝首の骨〞」を見つけるまでの紆余曲折は、拙著『キリン解剖記』(ナツメ社)に詳述されているので、ここでは結論だけを述べることにする。「8番目の〝首の骨〞」の正体は、第一胸椎という骨だ。7個の頸椎に続く、8番目の脊椎である。
「胸椎」は、本来胴体を構成する脊椎で、左右には肋骨が接し、頸椎に比べてあまり動かないのが特徴である。そのため哺乳類において、首の運動に関与する〝首の骨〞は、基本的には7個の頸椎だけだと考えられてきた。
 ところがキリンは、筋肉や骨格の構造がほんのわずかに変化することで、本来動かないはずの第一胸椎が15度ほど動くようになっているのだ。シカやヒツジの仲間、キリンと近縁なのオカピでも、第一胸椎はほとんど動かない。キリンの第一胸椎だけが、あたかも〝首の骨〞であるかのようによく動くのである。第一胸椎の可動範囲はたいしたことないが、大人のキリンであれば、この骨の動きによって頭の到達範囲が50センチ以上も広がることが推測された。

画像2

 キリンは、高いところの葉っぱを食べるのに有利な身体をもった動物である。首が長いだけでなく、四肢も長い。しかも、後ろ足よりも前足のほうが長いため、お尻から首にかけて背骨がもちあがり、首の根元の位置自体がほかの動物に比べて高くなっている。この体形は、高いところの葉を食べるのには有利だが、一方で地面が遠くなってしまうので、水を飲む際に工夫が必要になってしまう。高い可動性をもつ「8番目の〝首の骨〞」は、「頸椎は7個」という哺乳類の身体構造の基本ルールを守ったまま、首の可動範囲を広げて「高いところの葉を食べる」「地面の水を飲む」という2つの目的を同時に達成することを可能にしたのだ。

 私のこの研究は、過去の研究者が残した2つの偉大な研究に端を発するものだ。
 1つは、今から100年ほど前、イギリスの研究者レイ・ランケスターによるもの。彼は、キリンとオカピの頸椎の形を比較し、「キリンの第七頸椎と第一胸椎は少し変わった形をしている」ということを報告した最初の人物だ。
 ちなみにレイは、アフリカの森林に生息するオカピが新種として報告されて1年もたたないうちに(なんとはじめはウマの一種として報告されている)、オカピがキリンに近縁な動物であることを見抜いた人物である。一番の専門は無脊椎動物で、カブトガニがクモに近い生き物であることを最初に指摘した人物でもあるそうだ。彼の「形を見抜く能力の高さ」が並はずれていたことがうかがい知れる。一般向けのサイエンス・エッセイもたくさん執筆していて、私が憧れている研究者の一人だ。いつか子供を生んだときには、「レイ」と名付けたいとすら思っている。
 そして2つ目は、1999年にアメリカの研究者ニコス・ソロウニアスが行なった研究である。キリンとオカピの頸椎と胸椎をさらに詳しく比較し、「キリンの第一胸椎は、オカピの第七頸椎によく似た形をしている」ことを明らかにしている。彼の記述は本当に丁寧で、私が研究アイデアを思いつく大きなきっかけとなった。
 研究というのは、長い積み重ねからなるものだ。何もないところから突然大きな発見がなされることは、めったにないだろう。小さな発見を重ね続け、その発見を遠い未来の研究者に託すことで、いつかブレイクスルーが生まれるのだ。

進化の答えは1つではない

 キリンは、「頸椎は7個」という哺乳類の基本形を維持したまま、もともとの身体の構造をわずかに変えることで、「8番目の〝首の骨〞」とも言えるよく動く第一胸椎を手に入れた。そうして、高所の葉にも地面の水にも届く柔軟な首ができあがった。進化というのは、本当にすごい。
 だが、進化の答えは1つではない。同じように長い首をもっていても、まったく別の進化を遂げた生き物も存在している。その名も「ゲレヌク」。キリンの首を意味する「ジラフネック」に由来する名前をもつ動物だ。
 ゲレヌクは、アフリカ東部に生息するウシ科の一種で、その名のとおり、すらっと細長い首と手足が特徴的な美しい動物である。ウシ科の動物といっても、牛乳パックに描かれたずんぐりむっくりしたウシとは異なり、非常にスレンダーな体形をしている。第2回の中でお話しした「ツノの違い」を知らなければ、シカの一種だと思ってしまうかもしれない。
 彼らはキリンと同じく、長い首を生かして、ほかの動物では届かないような高いところにある木の葉を食べて生活している。頸椎は7個なので、その1つ1つがとても長い。これもキリンと同じである。
 ところが、ゲレヌクはそれだけではない。後ろ足2本で直立し、木の上のほうにある枝に前足をかけて葉っぱを引き下ろし、首を伸ばしてその葉を食べるのだ。ゲレヌクは背丈1.5メートルほどの中型のウシの仲間だが、立ち上がることで、地上2メートルよりも高い場所に生えている葉っぱを食べることができる
 さらに、ゲレヌクには、「後頭部が伸びて出っ張っている」という特徴もある。同じくらいの大きさの近縁種に比べて、後頭部が5センチほど長いのだ。これにより、首を伸ばしたときに、ほんの少しだけ遠くまで口が届くようになっている。たった数センチの違いとはいえ、食べることのできる範囲が広がっていることは間違いない。なんだか「0番目の〝首の骨〞」とでも呼びたくなってしまう構造だ。

画像3

 本来ほとんど動かないはずの胸の骨を動かし、高い場所の葉を食べ、地面の水を飲むキリン。後頭部が伸びた頭をもち、後ろ足で直立して高い場所の葉を食べるゲレヌク。彼らの姿を見ていると、「目的さえ達成されていれば、やり方なんて何でもいいんだよ」と言われているような気持ちになる。
 ほかの動物が食べることのできない高い場所の葉を食べることができ、生存に有利であれば、方法は何でもいいのだ。「キリンの8番目の〝首の骨〞」に対して、「後ろ足で立ち上がる」「首だけではなく頭も伸ばす」というゲレヌクの方法は、シンプルすぎて痛快なほどだ。
 自分の力では変えられないことは、世の中にたくさんある。誰かが語った「壁の乗り越え方」が、自分にはどうしてもできないこともある。大事なのは、壁にぶつかったそのときに、手持ちのカードを駆使して、自分なりの方法でなんとか道を切り開いていくことだ。かっこよくなくても、誰かと同じ解決方法でなくても、問題が解決されればそれでいいのだ。

ひとつ前に戻る  次に進む

プロフィール
郡司芽久(ぐんじ・めぐ)

東洋大学生命科学部生命科学科助教。2017年3月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程を修了し、博士号(農学)を取得。同年4月より日本学術振興会特別研究員PDとして国立科学博物館勤務後、筑波大学システム情報系研究員を経て2021年4月より現職。専門は解剖学・形態学。第7回日本学術振興会育志賞を受賞。著書に『キリン解剖記』(ナツメ社)。

関連コンテンツ

※「本がひらく」公式Twitterでは更新情報などを随時発信しています。ぜひこちらもチェックしてみてください!

ありがとうございます! さらに楽しい記事をお届けできるよう頑張ります!
NHK出版の書籍編集部が、多彩な執筆陣による連載小説・エッセイ、教養・ノンフィクション読み物や、朝ドラ・大河ドラマの出演者や著者インタビューなどをお届けします。新刊情報も随時更新。ときどき編集部裏話も!