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池谷裕二+ヨシタケシンスケのそのモヤモヤ、かいけつします 第5回

質問する人
東京学芸大学附属竹早小学校3年~6年生のみなさん
答える人
池谷裕二 薬学博士。東京大学・大学院薬学系研究科・教授。48歳、しし座。好きな食べ物はたけのこ。6歳と3歳の女の子のお父さん。
いっしょに考えてイラストを描く人
ヨシタケシンスケ 絵本作家、イラストレーター。45歳、ふたご座。好きな食べ物はイカ。12歳と7歳の男の子のお父さん。

質問「どうしても、やりたいことをやりすぎてしまいます。なぜでしょうか?(本やゲーム)」 ゾウリムシさん(4年)より

質問「ゲームがやめられない! どうすればいい?」 マイクラ部さん(4年)より

質問「ゲームがやめられないのはなぜですか?」 ブロッコリーさん(5年)より

質問「ゲームってなんでハマるの?」 s.hモードさん(6年)より

質問「ゲームはなぜ楽しいのか?」 ゲーム人間さん(6年)より

 今回もゲームにまつわる質問に答えていきます。
 どうしてゲームをなかなかやめることができないのか──。
 前回、ぼくもゲームが好きだと告白したけれど、いま、プレイステーションの人気ゲーム「グランツーリスモ」の最新版がほしくてたまらないんだ! ふぞくのハンドルコントローラーを買えば、家にいながらにしてカーレーサー気分を味わえるはず。でも、ゾウリムシさんのように、いったん始めると、ついやめられなくなってしまう性格なので、なんとかがまんしているんだ。
 「何かにはまりやすい性格」、たしかに困ることもあるけれど、根気のいる研究に興味を失わずに長年取り組めているのは、この性格のおかげかもしれない。どうだろう、考えようによっては夢中になれることがまったくないよりも、ときに、われをわすれるほど一生懸命になれる物事があることは幸せなことなんじゃないかな。マイクラ部さんやブロッコリーさんもそういった情熱をぜひ大切にしてください。
 ただ、ゲームは「中毒になる可能性」があるということを知っておいてほしいと思います。おうちの人と約束した時間はとっくにすぎていて、見つかったらゲーム機を取り上げられるかもしれない。でも、楽しすぎてやめられない。カギをにぎっているのは、脳のなかにある「報酬系(ほうしゅうけい)」という場所です。「報酬」とは何かをしたときの対価として与えられるお金や品物のこと。わかりやすくいうと「ごほうび」のことで、報酬系とは、うれしさや心地よさを生み出すシステム(仕組み)のことをいうんだ。たとえば、家の手伝いをしたときにお父さんがこっそりおこづかいをくれたとしよう。みんな「やったね!」と思うでしょ。こういうとき脳は「うれしさ」を感じてぴくぴく反応する。そのほか、大好きな人の写真を見たとき、みんなはまだ経験できないけれど、お酒を飲んだとき、パチンコや競馬などのかけごとを楽しんでいるときも、この場所が元気に活動するんだ。
 人気があるゲーム、つまりほかのゲームよりも売れているゲームは、この報酬系を刺激(しげき)するのが上手なんじゃないかな。ゲーム好きのみんなには、心あたりがあるのでは? ものすごくいいタイミングでレベルアップができたり、ほしいキャラクターが手に入るようになっている。そんなときは、脳のツボをマッサージしてもらっているようなもので、そりゃあもう、たまらなく気持ちがいい。s.h.モードさんやゲーム人間さんの「なぜハマるの?」「なぜ楽しいのか?」という疑問の答えはここにあります。ゲームをやめると、心地よさは消えてしまう。だから「あと10分、あと20分」と続けてしまうんだ。
 みんなは、学校で「世界保健機構(WHO)」について勉強したかな。人々の心と体の健康のために、医療や保健にかんするさまざまなデータを公開したり、新しいルールを決めたりする国連の機関です。WHOは2019年5月、日常生活に影響するほどゲームにのめりこんでしまう状態を、ギャンブル依存症(いぞんしょう)などと同じ「精神疾患(せいしんしっかん)」として正式に認定しました。「ゲームをする時間や回数を自分でコントロールできない」「日々の活動よりもゲームを優先(ゆうせん)してしまう」といったことが続くと、治療(ちりょう)が必要な「ゲーム障害(しょうがい)」と診断されることになったんだ。
 心の病気と認められたことで、研究は進み、予防対策や治療法の開発がこれから進んでいくはずだけれど、現時点ではゲーム障害を治す薬は見つかっていない。薬物依存症やアルコール依存症も同様で、薬やお酒に近づくことができない環境に身を置くことで、少しずつ健康な心と体を取り戻していくしか方法がないんだ。ゲーム障害の場合も、ゲーム機を手ばなさないといけなくなるだろう。
 ゲームは楽しい。でも、ゲームは簡単にやめられないようにつくられていることを覚えておいてください。心が病気になってしまうと問題なので、ゲームにコントロールされるのではなく、自分がコントロールできる範囲で楽しもう。ぼくもみんなと約束するよ。娘たちのお手本にならないといけないからね。


1111第5回イラスト

(構成=髙橋和子)

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