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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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#柚木麻子

自分をいたわる日に食べる、やば焼きそば――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。寒暖差が激しいこの時期、何もしたくない日の柚木さんの過ごし方についてです。 ※当記事は連載の第36回です。最初から読む方はこちらです。 #36 布団で過ごす一日 この日曜日は、冷たい雨が降っていた。  上手くいかないことが重なり、私はすっかり塞ぎ込んでしまった。寒暖差が激しいのも手伝って、もう何もしたくなくなってしまう。そうなると、過去の色々な嫌なことや、自分の

原作者が尊重され、守られるように――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、映像化の際に原作者に大きくかかる負担について、小説家であり、かつて脚本家志望だった柚木さんからの提言です。 ※当記事は連載の第35回です。最初から読む方はこちらです。 #35 映像化と原作者  テレビドラマにもなった漫画「セクシー田中さん」の原作者・芦原妃名子さんがお亡くなりになった。映像化にあたっての条件が守られず原作が改変されてしまい、それを防ぐた

今年が良い年になりますように!――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。お正月に立てた、2024年の決意表明をお送りします。 ※当記事は連載の第34回です。最初から読む方はこちらです。 #34 2024年の二つの目標 年が明けるなり、胸の痛むニュースが続く。  前回も書いた通り、私は、四十二年間自分のことしか考えてこなかった(それが通用した最後の世代かもしれない)人生を後悔しっぱなしである。そして、こうやって書いている今も、自分で頭

変えられるところから積み重ねて――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、新刊の執筆をきっかけに取り組んでいる、小さな「魔法」についてお届けします。 ※当記事は連載の第33回です。最初から読む方はこちらです。 #33 小さな魔法をかけるように この連載が始まってから、数々の不調をギャーギャーと訴えてきた。私なりにあらゆることをやった。通院したり、よく眠れるようにふるさと納税の返礼品に高い枕を選んだり、漢方薬を手に入れたり、身体

追悼 マシュー・ペリー――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、アメリカのドラマ「フレンズ」に出演していた俳優、マシュー・ペリーの訃報に触れて、考えたことです。 ※当記事は連載の第32回です。最初から読む方はこちらです。 #32 さようなら、チャンドラー 最近気づいたのだが、私は何かに順位をつけるのがとても苦手だ。年末になると、本でも映画でも「今年のベスト1は?」という質問を受けるのだが、どうしても選べない。例えば、

あなたの強い味方、こっそり教えてください――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、愛用品ではないけど、つい手に取ってしまうアイテムについてのお話です。 ※当記事は連載の第31回です。最初から読む方はこちらです。 #31 頼れるアイツ 10月に入ってようやく空が高くなって、いろんなバリエーションの雲を楽しめるようになった。しかし、冬の入り口のごとく寒い日と、猛暑風味な日が交互にやってくるので、みんなそうだと思うが、体調管理が難しい。そん

正解は「縦になる」――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、台風の到来に伴う体調不良への対応策について考えます。 ※当記事は連載の第30回です。最初から読む方はこちらです。 #30 台風一過 夜更けから雨が降り続け午前中は台風が吹き荒れ、今はもう通り過ぎたが、窓の外では、真っ黒なアスファルトをぱらぱらと小雨が叩いている。前日から、何か見えないものにのしかかられているくらい身体が重く、飛行機に乗っている時のように頭

七年ぶりの海外旅行へ――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。出産以降初、久しぶりの海外旅行での最高の出会いと、柚木さんが考えたこととは? ※当記事は連載の第29回です。最初から読む方はこちらです。 #29 無限の時間を 以前、この連載で、いずれ必ずやってくるだろう死の恐怖に突然とりつかれ、刻一刻と過ぎていく時間をつなぎとめるために、日記を書き始めた、とつづったはずだ(#14死の恐怖)。私は昔、大病して昏睡状態を経験したこ

「100分de名著」収録を終えて――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。7月から一か月間、柚木さんが講師として出演する「100分de名著」の収録の裏話をお送りします。 ※当記事は連載の第28回です。最初から読む方はこちらです。 #28 テレビ出演 この連載の媒体はNHK出版だが、同系列のNHKでテレビ出演をする。「100分de名著」にて林芙美子『放浪記』を全4回で解説することになったのである。新刊案内でキー局の番組にちょっとだけ顔が

新しい人生の、スタート――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は久しぶりの夜遊びと、家庭のカレーの変遷から、柚木さんの新しい一歩についてお送りします。 ※当記事は連載の第27回です。最初から読む方はこちらです。 #27 夏の夜の空気 産後はじめて、つまり六年ぶりくらいに夜遊びにでかけた。  いやいや、十九時以降、食事や飲み会、観劇には子どもを夫に任せ、割とよく出かけている方だが、今にして思えば、それらの性質は割と仕事寄

みんなテレビっ子だった!――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。動画との付き合い方に悩みつつも、自分の子どものころを振り返ってみると……。 ※当記事は連載の第26回です。最初から読む方はこちらです。 #26 テレビ視聴時間 うちの子どもは、動画に夢中である。すきあらば私のスマホを奪い、YouTubeを見ようとする。もしくは、自宅のテレビ画面でNetflixかAmazon Prime Videoをじっと見ている。タブレットは捨

増える本、どうする?――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は小説家にはつきものの悩みについてです。 ※当記事は連載の第25回です。最初から読む方はこちらです。 #25 ときめきでは決められない 新型コロナウイルスが発生してから三年。ものすごく本が増えてしまったのだ。物書きの家に本が多いのは当たり前だし、物書きに限らず自粛の間にネットで本を買いまくった人は多いだろうと思う。しかし、我が家のそれは、生活に支障が出るくら

キャラクター料理をもっと美味しく――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は「キャラクター料理」と「おいしい」の両立についての考察です。 ※当記事は連載の第24回です。最初から読む方はこちらです。 #24 推しと美味 祖師ヶ谷大蔵がテレビ番組に取り上げられ、その中で紹介されたウルトラマンカフェが気になったので、ママ友と子どもたちと一緒に行ってみた。物販には新旧たくさんのウルトラマンや怪獣が並び、飲食スペースでは、パスタやカレーも楽

手巻き寿司の適量を追い求めて――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は読んでいるとおなかがすくこと間違いなし、手巻き寿司のお話です。 ※当記事は連載の第23回です。最初から読む方はこちらです。 #23 ちょうどいい量 この連載が四年分まとまった初エッセイ『とりあえずお湯わかせ』に詳しく書いたのだが、コロナ禍を経て、人を呼ぶことはもちろん、手作りの料理を振る舞う機会はなくなり、よって節分に恵方巻きをつくって、配り歩く習慣は消滅