小説・エッセイ

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世界は哀しくも愛おしく、そして不確かな存在――「八咫烏シリーズ」著者・阿部智里の短編小説『唯一の君』

世界は哀しくも愛おしく、そして不確かな存在――「八咫烏シリーズ」著者・阿部智里の短編小説『唯一の君』

累計130万部を突破中の大人気和風ファンタジー小説「八咫烏シリーズ」の著者が描く、生命と尊厳、現実と虚構が入り交じる不可思議な世界。前作『秘密のお客さま』に続く、待望の短編小説第2弾。 「すぐる。お前、お見合いをしてみないか?」  苺のショートケーキを頬張っていた僕は、唐突なお父さんの言葉にぽかんとした。 「お見合い? 僕が?」 「とても素敵なお嬢さんから、そういうお話があったんだ。どうだろうか?」  どうだろうか、と言われても。  今日は僕の十八歳の誕生日だった。  数分

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阿部智里(「八咫烏シリーズ」『発現』)最新掌編小説 『秘密のお客さま』

阿部智里(「八咫烏シリーズ」『発現』)最新掌編小説 『秘密のお客さま』

累計130万部を突破中の大人気和風ファンタジー小説「八咫烏シリーズ」の著者が贈る、温かで、ちょっと懐かしい、小冒険譚。 1 ホスト、あるいはオーナーの話 「なんでこんな所に傘があるんだ?」  不思議そうな父の声に振り向いてそれを見た瞬間、一気に昔の記憶が甦った。  父が力任せに取り除いた野バラの枝の向こうには、崩れかかった白壁に突き刺さるようにして、子ども用の傘が開いている。  骨は錆びて赤くなり、鮮やかだったであろう黄色の布は、埃と枯れ草ですっかり茶色く変色していた。穴

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