小説・エッセイ

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私はとても上手に針を刺すことができます――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

私はとても上手に針を刺すことができます――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

 妊娠安定期に入った鳩里鳩子だが、彼女の心配は尽きない。  彼女の信念では、生まれてくる子はあらゆる意味で「完璧」でなければならないのだ。  自然かつ完璧な状態で、すべての「特権」を掌握できる存在……。  そんな彼女が選んだ選択は――。  ※当記事は連載第4回です。第1回から読む方はこちら。  私がそれを申し出たとき、私の産婦人科医はぎくりと肩を震わせる。羊水検査だ。私のつわりはすっかりおさまっている。尿検査でもケトン体は出ていない。すべての数値が正常だ。胎児にも問題は見ら

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今の私には人殺しができない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

今の私には人殺しができない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

 妊娠が判明した鳩里鳩子だが、その信条は確固として変わらない。自分より強い者しか殺さない。そんな彼女は、複数の「女性だけ」が殺された事件を「無差別通り魔事件」と報道するニュースに憤る。しかし、その後に訪れた未体験のつわりという悪夢が彼女の心をかき乱し――。  ※当記事は連載第3回です。第1回から読む方はこちら。  吐き気にもいろいろある。二日酔い。風邪。胃腸炎。食中毒。そういうのはただただ最悪だけど、そうでもないのもあって、それは高揚と緊張と集中がぴんと張り詰めたときに感じ

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人を「無差別」に殺してはいけない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

人を「無差別」に殺してはいけない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

 どこにでもいるような平均的で平凡な女性、鳩里鳩子。そんな彼女にとって唯一健全ならざる習慣は「ときどき殺しをする」ことだった。その手口は欲望のままに行う無差別殺人に見えるが、彼女は堅固たる自分のルールに則って人を殺し続けていた。  そんなある日、彼女の身体に異変が起こり――。  ※当記事は連載第2回です。第1回から読む方はこちら。  夕方に起こった殺人事件で、夜のニュースはもちきりだ。私はソファーで憤慨している。夫は背後の食卓でパソコンを開いている。食洗機のモーターのうなり

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健全な女性が健全ではない欲求を果たす――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス連載小説「ここからは出られません」藤野可織

健全な女性が健全ではない欲求を果たす――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス連載小説「ここからは出られません」藤野可織

 至高の狂気を描き出す作家、藤野可織の集大成がここに誕生!  私立大学の職員である鳩里は、ごくありふれた生活を送っている。決まった時間に出勤し、決まった時間に帰宅。ランチタイムには、身に着けたブランド品を同僚と自慢しあうなど、その生活は普通そのものだ。そんな「普通」な彼女が抱える秘密とは―――。 「ここからは出られません」というサインが輝いているのを見ている。これが私の毎朝の習慣。そのサインは、職場の最寄駅である地下鉄のホームの北の端にある。北の端とかんたんに言ってしまうと

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