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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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#紅葉

森の中ではいのちがつながっている――「熊本 かわりばんこ #10〔柚と落ち葉――冬の到来〕」田尻久子

 長年過ごした東京を離れ故郷・熊本に暮らしの場を移した吉本由美さんと、熊本市内で書店&雑貨カフェを営む田尻久子さん。  本と映画、そして猫が大好きなふたりが、熊本暮らしの手ざわりを「かわりばんこ」に綴ります。 ※#01から読む方はこちらです。 柚と落ち葉――冬の到来  朝起きたら台所に柚が枝ごと置いてあり、一筆添えられていた。  今年は柚(ゆず)がたくさんなったので お鍋のお供にどうぞ。  手紙があるってことは手渡されたわけではなさそうだと思い、家人に訊いたら、縁側に置いて

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「山ヲ歩キ、湯ニ到ル――#03松川温泉発、神の絨毯経由、松川温泉行き」大内征

 9月になると、頻繁に空を見上げている自分に気がつく。まだ東京の空にはモクモクとした入道雲が宇宙にまで飛び出してしまいそうな背の高さで居座っていて、時おり耳に届く遠雷は、おそらくあの雲たちの仕業なのだろう。しかし、見上げた空の、そのまたずっと北の東北地方の空の下には、そろそろ秋の気配が色彩となって天から山に降りてくる頃だ。彼の地において、秋の気配、それは神の気配でもある。  青空に残る白い夏雲を見上げながら、ぼくは「神の絨毯」のことを思い出した。神の絨毯とは、宮城と岩手の県

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