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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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2022年1月の記事一覧

“人間不在の都市計画”に反対し、都会の中のよきコミュニティを守ったひとりの「母親」ジェイン・ジェイコブズ――連載「アメリカ、その心の生まれるところ~変革の言葉たち」新元良一

 自由・平等・フロンティアを旗印に、世界のリーダーとして君臨してきたアメリカ。様々な社会問題に揺れるこの国の根底には何があるのか? 建国から約230年。そこに培われた真のアメリカ精神を各分野の文化人の言葉の中に探ります。  第7回は、行政が推し進める都市の大規模再開発による利便性より、住民の多様性や持続可能性を求めて立ち上がった地域住民の声を集結させ、大きな市民運動にまで広げ、コミュニティの重要性を現代に伝える伝説の市民リーダー、ジェイン・ジェイコブズです。  ※第1回から読

研究者は「極道者」――「マイナーノートで」 #10〔役に立つ、立たない?〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 役に立つ、立たない?  教師にはなりたくてなったわけではなかったことは前回書いた。だが、なってみると、教師はよい職業だった。老いも若きも年齢を問わず、目の前で人が成長していく姿を見るのは、喜びだった。子どもを産まなかったが、実の親には子どもが身体的に成長する姿を

気をそらさず仕事をするには――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、テレワーク中の人にも参考になる、家の外の「集中できる場所」についてです。 ※当記事は連載の第10回です。最初から読む方はこちらです。 #10 集中できる場所  集中力アップというと、めちゃくちゃ胡散臭く聞こえるが、今回は私がどうやって仕事の最中に気をそらさないでいるか、その話をしたい。 それは  ・スマホを家に置いて、コーヒーチェーン店で仕事をすること(

日比谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――〔終わりとシンプルさ〕 新井見枝香

※当記事は1話読み切りのエッセイ連載「日比谷で本を売っている。」の第24回です。どの回からもお読みいただけますが、第1回から読む方はこちらです。  その町には、同じ店名のケーキ屋とパン屋とカフェがあった。どれも昔からあって、地元の人に愛されている人気店だ。私はそのケーキ屋の四角いスイートポテトが大のお気に入りだった。しかし数か月ぶりに立ち寄ると、ケーキ屋だけでなく、同じ名前の店の全てがシャッターを下ろしている。地元の人に訊ねると、それらを経営する会社の社長が大きな負債を抱え