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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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#熊本かわりばんこ

オリーブ少女ではなかった私――「熊本 かわりばんこ #02〔忘れがたい春と募金箱のこと〕」田尻久子

忘れがたい春と募金箱のこと  1980年代はじめ、私が中学生の頃に『オリーブ』が創刊された。若い方は知らない人もいるだろうが、私と同世代でこの雑誌のことを知らない人はあまりいない。世の中にオリーブ少女を生み出したファッション誌だ。田舎の貧乏な中学生にとってファッション誌は興味の対象ではなかったが、高校に通うようになると、同じ制服を着ているはずなのにまわりとはどこか違う雰囲気を醸し出す女の子が、身の回りでは見たことのないような雑貨や着飾った少女たちの写真が載っている『オリーブ

震災と帰郷 44年ぶりの街での出会い――「熊本 かわりばんこ #01〔人生の第二章が始まった〕」吉本由美

人生の第二章が始まった  いろんなところに書いてきたからそれらを読まれた方には「もうわかった、耳タコだ」とげんなりされそうだけれど、ご存じない方のほうが多いと思い自己紹介として故郷にUターンしたところから書かせていただく。  私は44年間東京に住んでいた。その長き暮らしを畳んで故郷熊本に戻ったのが10年前、62歳のときだ。長き暮らしを畳んだ理由については追々書くのでここでは端折り、とにかく10年前の3月13日、お昼過ぎ、唯一の家族であるコミケの入った猫カゴ抱え、数年前から住