連載

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今の私には人殺しができない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

今の私には人殺しができない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

 妊娠が判明した鳩里鳩子だが、その信条は確固として変わらない。自分より強い者しか殺さない。そんな彼女は、複数の「女性だけ」が殺された事件を「無差別通り魔事件」と報道するニュースに憤る。しかし、その後に訪れた未体験のつわりという悪夢が彼女の心をかき乱し――。  ※当記事は連載第3回です。第1回から読む方はこちら。  吐き気にもいろいろある。二日酔い。風邪。胃腸炎。食中毒。そういうのはただただ最悪だけど、そうでもないのもあって、それは高揚と緊張と集中がぴんと張り詰めたときに感じ

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人を「無差別」に殺してはいけない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

人を「無差別」に殺してはいけない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

 どこにでもいるような平均的で平凡な女性、鳩里鳩子。そんな彼女にとって唯一健全ならざる習慣は「ときどき殺しをする」ことだった。その手口は欲望のままに行う無差別殺人に見えるが、彼女は堅固たる自分のルールに則って人を殺し続けていた。  そんなある日、彼女の身体に異変が起こり――。  ※当記事は連載第2回です。第1回から読む方はこちら。  夕方に起こった殺人事件で、夜のニュースはもちきりだ。私はソファーで憤慨している。夫は背後の食卓でパソコンを開いている。食洗機のモーターのうなり

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健全な女性が健全ではない欲求を果たす――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス連載小説「ここからは出られません」藤野可織

健全な女性が健全ではない欲求を果たす――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス連載小説「ここからは出られません」藤野可織

 至高の狂気を描き出す作家、藤野可織の集大成がここに誕生!  私立大学の職員である鳩里は、ごくありふれた生活を送っている。決まった時間に出勤し、決まった時間に帰宅。ランチタイムには、身に着けたブランド品を同僚と自慢しあうなど、その生活は普通そのものだ。そんな「普通」な彼女が抱える秘密とは―――。 「ここからは出られません」というサインが輝いているのを見ている。これが私の毎朝の習慣。そのサインは、職場の最寄駅である地下鉄のホームの北の端にある。北の端とかんたんに言ってしまうと

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震災によって引かれた“境界線”が、一変させたもの――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

震災によって引かれた“境界線”が、一変させたもの――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

 ついに笘篠刑事に身柄を確保された鵠沼駿。確保の直前、鵠沼は旧友・五代良則と思い出の場所で再会を果たし、二人にとって空白の時間を埋めていた。震災によって引かれた線が、鵠沼と五代のその後の人生を大きく変えていたのだった。警察に連行された鵠沼は、笘篠に何を語るのか――。  ※本記事は連載最終回(第12回)です。 最初から読む 境界線 最終回(第12回) 連載第11回へ戻る 関連コンテンツ プロフィール 中山七里(なかやま・しちり) 1961年生まれ、岐阜県出身。2009

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人生と物事の価値観を根底から揺るがしたあの日――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

人生と物事の価値観を根底から揺るがしたあの日――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

 鵠沼駿と五代良則それぞれの関係者への事情聴取を行ったが、ふたりの決定的な接点も有力な犯行の手がかりも、笘篠刑事は見つけることができなかった。それどころか、話を訊けば訊くほど鵠沼が犯行に及ぶ人間像からは遠く感じられるほどであった。しかし、鑑識を進めていた両角より、鵠沼がキズナ会の事務所に残していたジャケットから検出された土が、真希竜弥が殺害された現場の土の成分と一致したとの報告を受け、事態は一変する。  ※本記事は連載第11回です。 最初から読む 境界線 第11回 連載

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見えぬ接点と深まる謎……事件は最終局面へ――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

見えぬ接点と深まる謎……事件は最終局面へ――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

 たび重なる詐欺により宮城刑務所に収容されていた五代良則は、懲りることなく、出所後のさらなる悪事を計画しながら日々を過ごしていた。そこには、五代が出所後の仕事のパートナーとして目をかけていた利根勝久の姿もあった。そんな折、東日本大震災が発生した。刑務所の食堂にあるテレビが五代の地元が濁流に飲まれていく様子を伝え、えもいわれぬ絶望感を味わった。それから二年後、出所した五代はかつての友人・鵠沼駿の安否を気遣い行方を捜すも、消息をつかめずにいたのだった。  ※本記事は連載第10回で

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宮城刑務所がむかえた3.11。その時いったい何が――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

宮城刑務所がむかえた3.11。その時いったい何が――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

 五代良則と鵠沼駿は、金山組のフロント企業「東北ファイナンス」に一矢報いるため、「東北ファイナンス」のホストコンピューターへハッキングすることで資産を複数の架空口座に不正送金する詐欺を思いつき、成功させる。これをきっかけにふたりは互いを認め合い、親交を深めた。2001年春、高校を卒業した詐欺師としての道を見出した五代は公認会計士を目指して予備校に通い、鵠沼は大学へ進学することで別々の道を歩み始めたのだった。  ※本記事は連載第9回です。 最初から読む 境界線 第9回 連

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インテリヤクザと被災者支援NPO法人の代表の過去とは? 情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説――「境界線」中山七里

インテリヤクザと被災者支援NPO法人の代表の過去とは? 情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説――「境界線」中山七里

 1999年4月、高校2年生に進級した五代良則の同じクラスには鵠沼駿がいた。校内で有名な札付きのワルだった五代と、クラス委員長を務める優等生の鵠沼。交わるはずのないふたりだったが、五代が暴力団の組員に襲われ瀕死の重傷を負っているところを、鵠沼が助けたことでふたりの関係性に変化が訪れようとしていた。  ※本記事は連載第8回です。 最初から読む 境界線 第8回 連載第9回へ進む 連載第7回へ戻る 関連コンテンツ プロフィール 中山七里(なかやま・しちり) 1961年

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身元が騙られた遺体の謎。情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説――「境界線」中山七里

身元が騙られた遺体の謎。情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説――「境界線」中山七里

 鬼河内珠美が住んでいたアパートを突き止めた笘篠たちは、そこで「東日本大震災被災者キズナ会」のパンフレットを見つける。一方で、官公庁からの個人情報を違法売買していた男への事情聴取によって、情報を買っていた人間がキズナ会の鵠沼駿だったことがわかる。笘篠と小宮山はキズナ会への家宅捜査に赴いて鵠沼の任意同行を求めようとするが、寸前のところで鵠沼に逃げられてしまう。  ※本記事は連載第7回です。 最初から読む 境界線 第7回 連載第8回へ進む 連載第6回へ戻る プロフィール

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長編ミステリー小説 「境界線」第6回 中山七里

長編ミステリー小説 「境界線」第6回 中山七里

鬼河内珠美と真希竜弥が身元を入手した経路を追っていた笘篠と蓮田は、〝名簿屋〟を裏稼業としている五代良則への事情聴取を行うも、芳しい成果を得ることができなかった。五代の関与を怪しみつつも、名簿屋に情報を売った出所をつかむべく、笘篠たちは膨大な個人情報を取り扱う役所や金融機関を探ろうとしていた。 境界線 第6回 連載第7回へ進む 連載第5回へ戻る プロフィール 中山七里(なかやま・しちり) 1961年生まれ、岐阜県出身。2009年、『さよならドビュッシー』で第8回「この

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