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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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2022年11月の記事一覧

「いずれわたしも」と思いながら、想定外だった――「マイナーノートで」#20〔転倒事故〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 転倒事故 追い抜かれていく、次から次へと。早足で歩く長身の若者はもとより、重い荷物を抱えた女性、子連れの若い母親にも。こんなはずではなかった。人並み以上に足の速いことを自負していたわたしは、連れの友人たちから、しょっちゅうこう言われていたのだ、「ちょっと待って、

あの名店をしのんで――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は自粛から一転、個人店へ通う日々についてのお話です。 ※当記事は連載の第20回です。最初から読む方はこちらです。 #20 個人店へ行こう 神楽坂の老舗甘味処「紀の善」さんが閉店してしまった。ショックがまだ消えない。なんでだかわからないが、「紀の善」だけは、世界が荒廃しても、まだあの坂の始まりに佇んでいるような気がしていたのだ。周囲から建物が消え、物資の供給が

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で仏教美術考証を務める塩澤寛樹さんの連載『運慶の風景』! 第3回は「仏像にとっての写実とは何か」を考えます。

 運慶仏に代表される鎌倉彫刻は、明治以来、その表現上の特徴として「写実性」が謳われてきているのですが、そもそも「写実」とはどのようなことを指しているのでしょうか。また鎌倉彫刻がこの言葉で表されるのは果たしてふさわしいのでしょうか。今回はこれらについて掘り下げてみたいと思います。そのために、まず願成就院の運慶仏の特徴を仔細に点検していきます。そして研究史における「写実」の語のあり方を遡りながら、この言葉の諸相を探っていきたいと思います。 *第1回から読む方はこちらです。 第3

現実世界に無理がある……。「昔も今も納得いかないこと」――お題を通して“壇蜜的こころ”を明かす「蜜月壇話」

タレント、女優、エッセイストなど多彩な活躍を続ける壇蜜さん。ふだんラジオのパーソナリティとしてリスナーからのお便りを紹介している壇蜜さんが、今度はリスナーの立場から、ふられたテーマをもとに自身の経験やいま思っていることなどを語った連載です。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #07 昔も今も納得いかないこと 「まぁてぇ~、ルパーン!」「いっけねぇ、とっつぁんだ~」という二人のやりとりは、大泥棒一味の華麗なる強奪ぶりが世界的に有名なアニメのワンシーン。この件は、セリ