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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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2022年2月の記事一覧

ノンセンスとは究極の秩序である――「言葉が・言葉で・言葉を作る『アリス』の世界」第1回

 誰もが知る名作『不思議の国のアリス』。子供の頃、アニメ映画などで見た方も多いでしょうが、原文を読んでみると、驚きの発見が詰まっています。そんな『アリス』の世界の深淵(アビス)を、気鋭の英文学研究者、勝田悠紀さんがご案内します。  ※本文で引用する『不思議の国のアリス』の日本語訳は勝田悠紀さんによるものです。 ノンセンス!  少女アリスは不思議の国で、巨大化と矮小化をくりかえす。最終章(第12章)で、最後の巨大化を迎えるとき、アリスが隣の席に座るヤマネと交わす以下の会話には

読解力のレシピ――「読解力」とはどのような能力か? 《「読む」ってなんだろう?――認知科学から考える》第1回

 言語の理解と思考の発達に焦点を当て、「学び」の本質について研究を行ってきた、慶應義塾大学教授の今井むつみさん。本連載では、私たちの誰もが日常で当たり前のようにしている「読む」という行為を手掛かりに、そのことを掘り下げて考えます。 衝撃的な調査結果  子どものことばと思考の発達を専門に研究している。言語が概念の習得や思考の発達にどのような役割を果たすのかという問いが研究テーマの中心である。  長年の研究から、言語の力が概念の習得と、思考力(推論の力)の発達を支え、推進する上

はまちに、ぶり、いくら、うに、白子、きわめつきはあわびの肝――「マイナーノートで」 #11〔寿司食いてえ……〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 寿司食いてえ……  コロナ疎開で自主隔離の間には、物欲も外食欲も減った。たまには外でおいしいもんを……と思うこともなくなった。フラ飯もイタ飯も、なくてもすむ。だが、たったひとつ、なくてさびしい思いをしたのが、寿司である。そういえばコロナ禍のあいだ、1年半以上も寿

また集まれる日を思って――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、柚木家の「手巻き寿司」をめぐるお話です。 ※当記事は連載の第11回です。最初から読む方はこちらです。 #11 手巻き寿司  感染拡大につき、何度目かの自粛生活である。正直言って、この二年間で今が一番精神的にキツい。昨年末、少しだけ自粛を緩めて、友達に会ったり、遠出をしたりしたのが本当に楽しかった分、とても寂しく、ささいなことでセンチメンタルに浸りやすくな

「NHK出版新書を求めて」第1回 新書は社会を映す窓――吉川浩満さん(文筆家・編集者)の場合

今回はこの人! 吉川浩満(よしかわ・ひろみつ) 文筆家、編集者。1972年3月、鳥取県米子市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーなどを経て、晶文社。著書に『理不尽な進化 増補新版』(ちくま文庫)、『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』(河出書房新社)ほか。文筆家・山本貴光氏とのユニット「哲学の劇場」ではYouTuberとしても活躍中。 *   *   *  12月23日、快晴。冬らしい寒さであるが、太陽の暖かさを感じる日であった。ジュンク堂書店池袋