中野京子「異形のものたち――絵画のなかの怪を読む 《人間以外のものとの合体(1)》」
生ぬるい日常を揺さぶり、鈍麻した意識を覚醒させ、それまで気づかなかった新たな美、新たな視点を知らしめることも芸術表現の一つだ。そのため創り手は固有の鋭い感覚で、奇異、異様、異類、異体の中に人間の本質を見出し、且つ、それを巧みに描写して受け手に突きつける。
文学であれば人の心の歪みや衝撃的事件(ギリシャ悲劇、ドストエフスキー作品etc.)、音楽であれば神経を逆撫でし、心を不穏にする音の連なり(モーツァルトの夜の女王の絶唱、ベートーヴェン『第五』の冒頭etc.)、演劇なら観客