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教養・ノンフィクション

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#愛

「出来合いの物語に自分を寄せずに生きていく」――赤坂真理×小島慶子『愛と性と存在のはなし』刊行記念対談(後編)

 作家・赤坂真理さんの新刊『愛と性と存在のはなし』の刊行を記念して、2020年12月、ゲストにエッセイストの小島慶子さんを迎え、オンライン対談「性をめぐる生きづらさと希望」を開催しました。終了後、SNS上で多くの反響を呼んだ同イベントから、当記事ではその内容をダイジェストにしてお届けする後編です。 ※前編はこちらからお読みいただけます。 可視化されない男の生きづらさ 小島 最近は、さまざまなマイノリティの問題に、社会課題として光が当たることが多くなってきました。マイノリティ

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「性の苦しみは、未だ言葉のないものばかり?」――赤坂真理×小島慶子『愛と性と存在のはなし』刊行記念対談(前編)

 作家・赤坂真理さんの新刊『愛と性と存在のはなし』の刊行を記念して、2020年12月、ゲストにエッセイストの小島慶子さんを迎え、オンライン対談「性をめぐる生きづらさと希望」を開催しました。終了後、SNS上で多くの反響を呼んだ同イベントから、当記事ではその内容をダイジェストにしてお届けします。 未だ言葉のない苦しみを語る難しさ 小島 赤坂さんとこうやって一対一でお話しするのは初めてなんです。今回の『愛と性と存在のはなし』、心に蓋をしていたことや、自らクローゼットに押し込んでい

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生まれた性にくつろげる人は、本当にいるだろうか?――赤坂真理『愛と性と存在のはなし』刊行に寄せて

 11月10日に、『愛と性と存在のはなし』という本を刊行した。長いあいだ持ってきた違和感や、未だ言語化されたことのない、もやもやした生きにくさなどに、端を発した本だと言える。が、書き終わって、その先に、あるいはその奥を突き抜けて、希望はあるのだと、自分自身が思えた本だった。  この本を手にしてくださった方は、少し変わった印象を持たれるかもしれない。これは社会批評なのか、個人的な物語なのか、と。  両方である。  この本には、社会考察とともに、わたしという一人の人間の、心も

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赤坂真理「愛と性と存在のはなし」最終回 〔セクハラ論議はなぜ一面的なのか――言葉をめぐる落とし穴〕

※連載第1回から読む方はこちら 「セクハラ」という言葉が見えなくする真実  愛と性をめぐる問題系の中で、最もありふれたことのひとつなのに、議論が一向に深まらないことがある。いわゆる「セクハラ」の問題である。「セクハラ」と聞くと、良心的な男性の多くが、どれほど身構えるものかを、わたしは知っている。一方で「セクハラ」を受けたと感じる側が、どれほど驚いたり不安定な気持ちになったり傷ついたりするものかも知っている。  これは女性とは限らない。性的な傷は男性から女性に付与されるもの、

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赤坂真理「愛と性と存在のはなし」第9回 〔すべての身体と心にはズレがある〕

※連載第1回から読む方はこちら 性の管理とその犠牲  この連載の第1回で、提示した命題を覚えているだろうか?  よりわかりやすく言い換えて、もう一度繰り返す。 「すべての個人は性的マイノリティである」  自分はヘテロセクシュアルだから普通、などと思っていると、人生が非常に生きにくい。これからますます生きにくくなるだろう。伝統価値の崩壊が世界一くらいに速い戦後日本社会では、特にそうだと思う。  おおまかに多数に属しているだけで、異性と結婚したところで、「普通に」「自然に」

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「愛と性と存在のはなし」第8回 〔男か女に生まれることの避けられない痛み〕 赤坂真理

※連載第1回から読む方はこちら  わたしのことを話さなければならない。わたし自身の最も深い苦悩について。  わたしの苦悩と、そのいちばんの核に隠された可能性について。  その可能性について語るために、わたしはこのすべてをしている。 耐え難さと生きていくために  それは、そうすべき対話の時間だった。相手が、誠心誠意そうしてくれるのを聞いていた。驚くべき告白を、聞いていた。息をするのも忘れて。わずかな息で、わたしは空気を吸うというよりは、言葉のエッセンスを吸う。それはわたしの

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「愛と性と存在のはなし」第7回 〔最も深い苦悩を語るということ〕 赤坂真理

※連載第1回から読む方はこちら  「あなたの秘密を書いてください」  そう言われたら、あなたは何を書くだろうか。  正直になれるだろうか? 目の前の人に。  いや、  正直になれるだろうか? ほかならぬ自分に。  自分のために。    そんな課題を、2019年度、教えていた大学生の創作の課題に出した。  何年か創作の教師をして、創造性には、この課題がいちばんよかった。いちばん変容が起きた。いろいろな課題を出したけれど、いちばん厄介なのは、才能の欠如でもテクニックの欠如でも

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「愛と性と存在のはなし」第6回 〔愛と欲望の痛みと傷〕 赤坂真理

※連載第1回から読む方はこちら すべてが性愛になる  前回、フレディ・マーキュリーとクイーンを描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』のことを書いた。  対比で思い出すのは、フランスの女性作家マルグリット・デュラスの少女期の自伝的小説『愛人 ラマン』だ。  いや、対比というよりは連想。  主人公に男女というちがいがありながら、不思議なほどよく似た手ざわりのものとして、わたしは両者を思い起こす。  両方とも「植民地」での性愛が核の部分にある。そこが起点となっている。フランスの

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「愛と性と存在のはなし」第5回 〔『ボヘミアン・ラプソディ』に見るマジョリティの希望〕 赤坂真理

 sometimes I wish I’d never been born at all.  そう、まったく生まれないほうがよかった。  影も形も。  こんなに孤独なら。  この世界に属せない、疎外感だけなら。  存在するということの、まったき孤独。   孤独だから、誰かを求めるのか。  求めても孤独。  本当の望みなど、知らないほうがよかった。  本当の自分をわかりたいだなどと。  かなわないなら。  手に入らないなら。  このふたつに分かれた世界に、望むものが、ないのな

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「愛と性と存在のはなし」第4回 〔草食男子とは誰か〕 赤坂真理

草食男子という誤認 「草食男子」という言葉がある。  恋愛や性に消極的な男子、という意味に使われることが多いだろうか。元気がない男と同義にされるなど、ネガティブに使われることも多い。   そもそもは「草食動物のように優しく草を食んでいるような男子」というポジティブな意味でつけた、と、名付け親の深澤真紀は語っている。初出は2006年である。いずれにせよ、一時の流行語であることを超えて、今では定着した感のある言葉だ。  この言葉は、単純な事実誤認をはらんでいる。とわたしは思ってき

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対談 鈴木 晶×岸見一郎 フロムの「愛」と アドラーの「勇気」に学ぶ

2019年3月24日、梅田 蔦屋書店にて、1月にNHK出版新書『フロムに学ぶ 「愛する」ための心理学』を刊行した著者・鈴木晶氏と、ベストセラー『嫌われる勇気』でおなじみの哲学者・岸見一郎氏によるトークイベントが開催されました。ここでは、心理学者のフロムとアドラーの話を中心に、大いに盛り上がったイベントの様子をお届けします。 進行・三砂慶明(梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ) 写真提供・梅田 蔦屋書店 エーリッヒ・フロムについて ――鈴木先生、岸見先生、本日はご来店いただ

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「愛と性と存在のはなし」第3回 〔#Metoo運動は何をめざしたいのか〕 赤坂真理

 女であるって生きづらいと思ってきた。  生まれて死ぬまでホルモンに、体調から感情まで支配されて生きるようで、身体のリズムや変化は、不可抗力な自然からの介入で自分の思い通りになることは少なくて、セックスはいいものだけれど、セックスにまつわる負担は女に一方的に、圧倒的に、多くて。  同じことやってるのに、不公平じゃない?  と、権利以前のことで神を呪いたくなった、こともある。  どこまでが不可抗力かどこからが意志なのか、女の人生は、きわめてわかりにくい。それに対して意志の持ち

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「愛と性と存在のはなし」第2回 〔男であることはなぜ辛いのか〕 赤坂真理

 年来、「自らの男性性への嫌悪」「男であることの罪悪感」を口にする男に出逢ってきた。  わたしはこれを他のどこでもあまり聞かないし読んだことがなかった。  わたし自身、聞いてよくわかったとは言えない。  じっさい、何がそんなにつらいのかと思っていた。  彼らは、変わった人たちではない。どちらかというと、適応的な人たちで、この「男性的世界」でほどよく成功しているように見え、しかも優しくて人当たりがやわらかい。  今風の男、と言うことができるかもしれない。  加えて言えば、彼ら

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「愛と性と存在のはなし」第1回 〔性的マイノリティは存在しない〕 赤坂真理

「男/女」と単純に分類しがちな私たちの「性」というものは、本来とても繊細で、多様だ。それは少しずつ認識されつつあるが、いま私たちが性を語る言葉は、あまりに人々を分断し、対立させ、膠着させるものではないだろうか。各々が性を語るその言葉の前提は、確かだろうか。マジョリティだと自認するあなたの「性」が、本当はもっと複雑で、深淵なものだとしたら――。私たちの内なる常識に揺さぶりをかけ、いまだ誰も語りえない性愛の豊かな地平をひらく、作家・赤坂真理の全霊の挑戦。  性的マイノリティは存

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