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教養・ノンフィクション

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2022年2月の記事一覧

ノンセンスとは究極の秩序である――「言葉が・言葉で・言葉を作る『アリス』の世界」第1回

 誰もが知る名作『不思議の国のアリス』。子供の頃、アニメ映画などで見た方も多いでしょうが、原文を読んでみると、驚きの発見が詰まっています。そんな『アリス』の世界の深淵(アビス)を、気鋭の英文学研究者、勝田悠紀さんがご案内します。  ※本文で引用する『不思議の国のアリス』の日本語訳は勝田悠紀さんによるものです。 ノンセンス!  少女アリスは不思議の国で、巨大化と矮小化をくりかえす。最終章(第12章)で、最後の巨大化を迎えるとき、アリスが隣の席に座るヤマネと交わす以下の会話には

アメリカ文学史に屹立する「何もしない」英雄――『教養としてのアメリカ短篇小説』より、「書記バートルビー」を読み解く第2講を全文公開!

 “I would prefer not to.”(「わたくしはしない方がいいと思います」)とは、『白鯨』の著者として知られるハーマン・メルヴィルの短篇小説「書記バートルビー」に出てくる表現です。上司に言いつけられた仕事をこの言葉によって拒絶しつづけ、それ以外一切の説明をしない奇妙な人物・バートルビー。アメリカ文学史に屹立するこの「英雄」の物語が発表されたのは1853年。150年以上前の作品ですが、先ごろ日本経済新聞の一面下コラム「春秋」(https://www.nikkei

ロシアとウクライナは仲の悪い「兄弟国家」? プーチン大統領がウクライナに固執する歴史的理由

 国際社会の懸命な説得もお構いなしに、2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始した。なぜプーチン大統領はウクライナにこだわるのか? そもそもウクライナとはどのような国なのか? ロシア政治研究の第一人者・下斗米伸夫さんの著者『プーチンはアジアをめざす』から、第2章「ウクライナで何が起こっているのか」の一部抜粋記事を緊急公開します。 ロシアとウクライナの兄弟関係  ウクライナ問題とはいったい何なのだろうか。  ウクライナはソ連崩壊後に誕生した人口4500万人ほどの国

読解力のレシピ――「読解力」とはどのような能力か? 《「読む」ってなんだろう?――認知科学から考える》第1回

 言語の理解と思考の発達に焦点を当て、「学び」の本質について研究を行ってきた、慶應義塾大学教授の今井むつみさん。本連載では、私たちの誰もが日常で当たり前のようにしている「読む」という行為を手掛かりに、そのことを掘り下げて考えます。 衝撃的な調査結果  子どものことばと思考の発達を専門に研究している。言語が概念の習得や思考の発達にどのような役割を果たすのかという問いが研究テーマの中心である。  長年の研究から、言語の力が概念の習得と、思考力(推論の力)の発達を支え、推進する上

比べて味わえば、歴史はもっと愉しい! 東大名誉教授が見た、古代ローマと江戸日本の意外な共通点

100万に及ぶ都市の人口、非一神教社会ゆえの習俗、250年続いた平和――前近代では他に例のない環境のもと、ローマと江戸にはどのような相似や相違が生まれたのか? 「アッピア街道と東海道」の比較から権力のあり方を考え、「コロッセオと千本桜」の比較から国民性に迫る、新感覚の歴史エッセイ『テルマエと浮世風呂――古代ローマと大江戸日本の比較史』。10のトピックを収載する本書から、「ワインと日本酒」を比較した章「平和が生んだ美酒」の一部抜粋をお届けします。 ワインの容器でできた人口の丘

「NHK出版新書を求めて」第1回 新書は社会を映す窓――吉川浩満さん(文筆家・編集者)の場合

今回はこの人! 吉川浩満(よしかわ・ひろみつ) 文筆家、編集者。1972年3月、鳥取県米子市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーなどを経て、晶文社。著書に『理不尽な進化 増補新版』(ちくま文庫)、『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』(河出書房新社)ほか。文筆家・山本貴光氏とのユニット「哲学の劇場」ではYouTuberとしても活躍中。 *   *   *  12月23日、快晴。冬らしい寒さであるが、太陽の暖かさを感じる日であった。ジュンク堂書店池袋