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ねこの無邪気さや奔放さから考える、争いをつくらない「想像する心」の大切さ――『もしもねこがそらをとべたら』

 ぼくは想像してみる。もしもねこがそらをとべたら、うみをじゆうにおよげたら、のびのびとあそびたいかもしれない。でも、しずかにくらしていたとりやさかなたちはなんて思うだろう? どうしたら、だれかとあらそったり、きずつけたりしないでいられるだろう―― 

 世界的アーティスト・黒田征太郎さんとシンガーソングライター・西島三重子さんが初共作した絵本『もしもねこがそらとべたら』が発売になりました。分断と対立が進む昨今、豊かに想像する心が他者との関わりや思いやる気持ちを刺激してくれる、優しさと想像力あふれるねことぼくの物語です。

自分がちがう立場になって考えてみると、見えてくる世界があるかもしれない

あたたかいレビューが続々!

 発売前にNetGalley(ネットギャリー)にゲラを公開したところ、さまざまな感想、反響をいただきました。その一部をご紹介します。

最も印象に残ったのが、「もしもねこがクジラみたいにおおきかったら」ただ大きいだけではない、クジラみたいに大きいとはすごい表現だ。そしてこの絵本が語っているのは「共生」。猫がどんなになっても、まわりの生き物たちと共に生きていける。ならば人間だって、人種が違っても、生活が違っても、言葉が違っても、食事が違っても共生できるはず。そんなことを考えさせられる。

(メディア/ジャーナリスト)

自由な空想に乗せて強烈なメッセージを感じます。自分の「もしも……」がその通りになったとして、この世界の秩序が崩れてしまったら、混乱をきたし、困惑するものが出てくるのです。自由な変身は楽しいかもしれないけれど、角度を変えてみればただの自分勝手かもしれません。お互いのことをもっとよく知る方がよりよい関係を築くことができるという点に、今のこの世界への提言と少なからずの不安が読み取れます。
それでも、「そうぞうは いつか きっとぼくたちに ちからを くれる」ということばに、諦めずに歩んでいこうという希望も見えます。

(レビュアー)

平和への活動を行っていらっしゃる黒田さんの絵本。この本を開くと、ねこは空や海で予想外の動きをしています。そしてそれは、周囲への無知からとんでもない事態を引き起こしてしまいそうです。まるでまるで、今の地球にすむ人類かのように。だからこの絵本の、
ほかのせかいのことを
まわりのみんなのことを
もっともっと
しらなくちゃいけないんだ

が、心にじわっときます。
小さなお子さんによみきかせたらどんな反応がかえってくるかな? 今からちょっと楽しみです。

(教育関係者)

もしも~できたらというのは欲にまみれているようで、誰かのために、そして自分のために、その純度が高いと美しい。そう思わされる文章。

(図書館関係者)

※「NetGalley」とは、出版社が提供する発売前の作品をデジタルデータで読めるサービスです。

どうすれば、ねこはとりやさかなたちとけんかせずになかよくすごせるだろう?

黒田征太郎さんがダイナミックに描くねこが、さまざまな世界へ飛び込んでいく

 自由を求めて時に空を飛んだり、時に別の生き物に姿を変えたりするたびに、ねこは周囲の生き物とたちと摩擦を生んでしまいます。自分の欲求に素直に遊ぼうとしただけのねこは、どうすればみんなと楽しく、仲良くやっていけるのでしょう。世界中で分断と対立が起こるいま、豊かに想像する心が他者との関わりや思いやることの大切さを刺激してくれる、優しさと想像力あふれるねこの絵本です。

ねこはのびのび空を飛べても、ねこが天敵のことりにとっては迷惑な話かも?

 長年、アート活動を通じて絵の持つ力、物語が刺激する想像力を伝え、老若男女問わず多くの人々の心を動かしてきた、アーティスト・黒田征太郎さん。同時に、戦争を知る最後の世代として、アートを通じて反戦へのメッセージと平和への祈りを届け、活動してきた黒田さんが、シンガーソングライターであり、近年は文筆家として数々の絵本の出版をし、作品を通じて日常の尊さを綴ってきた西島三重子さんと初共作。

 混迷を極めるロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとパレスチナの対立など、世界中で争いが絶えないなか、「命の重さ、等しさ」への想いを抱き共鳴するおふたりが、反戦・平和への願いを込めながら、ねこと社会との関わりをユーモアも交えながら描いた絵本です。

花になったねこは、まわりの花たちを地中に追いやる脅威にもなりえる?

 くり返しリズミカルに投げかけられる「もしもねこが〇〇だったら」というフレーズが、ページをめくった次にどのようなことが起こるかを、読み手にさまざまなイメージをひろげてくれます。無邪気にふるまうねこのストーリーを追いながら、目線を変えることで物事の見え方、相手の受け取り方が異なることへの想像力を刺激し、他者を思いやる気持ちを思い起こさせてくれるはずです。黒田征太郎さんの自由でダイナミックな、心に訴えかけてくる画に子どもも大人も目が釘付けになることでしょう。

じゃあ、ねこがくじらくらい大きかったら人間にとってねこは……

 来る2月22日は「ねこの日」。ねこ好きの方やねこの絵本を集めている方は、ぜひ本書もコレクションに加えていただくのはいかがでしょうか?

原画展やイベントを開催

原画展キービジュアル

 福岡の書店・ブックスキューブリック箱崎店さん2階のギャラリーで、『もしもねこがそらをとべたら』の原画展を開催します。色彩豊かでダイナミック、そしてときにチャーミングなねこにドキッとさせられる黒田征太郎さんの絵から、やさしさとイマジネーションにぜひふれてみてください。
 また、3月22日(金)には、黒田さんをお招きしたトークイベントも(オンライン配信も行います)。イベント後にはサイン会や黒田さんとの懇親会も催される貴重な機会ですので、ふるってご参加ください!

黒田征太郎 絵本『もしもねこがそらをとべたら』原画展

会期:2024年3月12日(火)~ 2024年3月31日(日)
時間:平日11:00~17:00/土日祝11:00~18:00(月曜定休)
会場:カフェ&ギャラリー・キューブリック(福岡市東区箱崎1-5-14ブックスキューブリック箱崎店2F)
※入場無料

黒田征太郎 絵本『もしもねこがそらをとべたら』刊行記念トークイベント

日時:2024年3月22日(金)19:00スタート(18:30開場)
会場:カフェ&ギャラリー・キューブリック
出演:黒田征太郎
進行:大井実(ブックスキューブリック店主)                 
会場参加費(GoogleフォームやPeatixから要予約):税込2,500円(1ドリンク付)
オンライン配信(チケットはShopifyやYahooから購入可):税込1,650円
※終演後、「サイン会」を開催いたします。
※また、終演後には同会場で懇親会あり(参加費:税込2,000円・軽食と1ドリンク付・要予約)。イベント参加費とサンドイッチ代金、懇親会費は当日受付にてお支払ください。
※ご予約後の無断キャンセルはご遠慮願います。
※イベントの詳細は以下のお店HPをご覧ください。

プロフィール

絵・黒田征太郎(くろだ・せいたろう)
1939年生まれ。イラストレーター・グラフィックデザイナー。日本工学院専門学校グラフィックデザイン科顧問。単著のほか桂三枝や池澤夏樹などとの共著も多数。当社では野坂昭如との共著『戦争童話集』(全4巻)。ライブ・ペインティングや壁画制作など幅広く活動を続けている。

文・西島三重子(にしじま・みえこ)
1975 年に歌手デビュー。76 年「池上線」ヒット後はシンガー・ソングライターとして活躍。作家としても多くの著作を刊行し、多彩に活動。近著に『サンタさんのゆめ・トナカイさんのゆめ』『ふたごパンダのこころコロコロ』(ともに中央公論新社/文・西島三重子 絵・はせがわゆうじ)など。

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